ニッケイ新聞 2008年12月23日付け
【イグアスー移住地発】パラグアイのイグアスー移住地で去る十一月二十九日、日本「匠」センターの落成式が盛大に行われた。独立行政法人・日本万国博覧会記念機構の助成を受けたもので、二〇一一年に迎える入植五十周年に向けた準備の一環として設立された。
移住地の入植が始まったのは一九六一年八月。それに備えて当時の日本海外移住振興株式会社、現在の独立行政法人・国際協力機構(JICA)、がイグアスーに事業所を建設した。「匠」センターはこの建物を利用したものだ。
事業所の建物は九二年九月に日本人会に移管され、教育研究センターとして使われてきた。月日の経過にともない建物の老朽化が進んだため、修復が避けられない状況になってきた。
そのような背景の中で、移住地の歴史遺産として保存しようという声が高まってきた。無為に保存するのではなく、有効利用しながら保存するために、移住者が持つ数々の日本伝統の技能作品を常時展示する方法で日本人会役員会の意見が一致し、万博機構に助成を申請した。
去る三月には同機構の中井昭夫理事長が移住地を訪れて日本人会役員と協議を行った。案件が妥当であると判断して、その場で承認書を公文義雄会長(高知県出身)に手渡した。
十一月二十九日の落成式には日本大使館の松井正人参事官と小暮康高書記官、各移住地代表、有賀秀夫JICAパラグアイ総合農事試験場長、イグアスー市長、九名の市会議員全員ら来賓をはじめ多くの人々が落成を祝った。
「匠」センターには和太鼓、手芸品、陶芸品、日本人形、木工品、絵画など、移住者が自信を持って作り上げた伝統工芸の数々が展示されて来場者の感動と驚きを喚起している。
ブラジル日系社会の名士の一人だった故半田知雄画伯の絵も展示されている。匠センター構想に賛同した友人の提供による貴重な一点だ。長野県松本市で伝統手芸品のひとつである毛鞠を作っている女性からも手作りの作品が寄贈されて展示されている。
このように、イグアスー日本人会は移住地内部からだけでなく、パラグアイ国内の他の移住地、近隣諸国、そして、日本からの伝統作品の提供を呼びかけている。〃未来の匠たち〃コーナーでは子供たちが紙で作った作品が展示され、次の世代が日本の伝統工芸を継承することを期待する一世移住者たちの願望が暗示されている。
「不耕起栽培」発祥の地、遺伝子非組み替えを含めた大豆生産地、本格的な和太鼓生産地、「美しい森づくり」などで知名度の高いイグアスー移住地にもう一つの誇りが誕生した。