ニッケイ新聞 2008年12月20日付け
連邦警察がマット・グロッソ州(MT)など七州と連邦直轄区(DF)で十二日に行った「アラクネ作戦」により摘発されたMTの農園は、麻薬の収益増を目的に都市第一コマンド(PCC)が購入したものと十九日付エスタード紙が報じた。
女神アテネに機織競争を挑み、クモに転生させられた織物の名手アラクネにちなんだ同作戦は、麻薬の密輸、販売に関わる流れを一網打尽にしようとしたもの。十二日の摘発では、MTなどで計四一人逮捕の他、MTではボリビアの麻薬組織の双発機受入れ用滑走路八本が確認され、三トンの麻薬も押収と十三日付伯字紙が一斉に報じた。
農園に持ち込まれた麻薬は、MT州内やサンパウロ州、南マット・グロッソ州、ミナス州、エスピリト・サント州、ゴイアス州、マラニョン州、DFに搬送。また、サンパウロ州など五カ所の再販拠点に運ばれたコカインは更に下部の販売網を通し販売される。
MTからの麻薬の八割はサンパウロ市とその周辺部に流れるというが、十九日の報道では、ボリビアの麻薬密売組織と直接接触したPCCが、麻薬受入れと保管、資金洗浄のために農園を購入し、牛の飼育や大豆の栽培はカモフラージュと報じている。
アラクネ作戦は一年以上の捜査に基づいたもので、一~九月の麻薬密輸量は一五トン。ボリビアからの密輸はコカインが中心で、年頭には月一トンのコカインと小銃などをボリビアに注文など、PCCは、大量購入で廉価に購入した麻薬の精製、販売で、三倍の収益を生んでいたという。
一方、コカイン合成品のクラッキが国内で流通し始めて二〇年経ち、使用者が全国に拡大と十四日付エスタード紙。若者や低所得者中心だったクラッキ使用は、中流階級や農村部へも拡大し、犯罪増加にも関連。廉価で即効性が高いクラッキは、効果が切れるのも早く、繰返し使用することで中毒にも陥り易い。
リオ市でのクラッキの押収量が二年間で四倍に増えたことや、国道などでのコカイン押収量急増の背景もアラクネ作戦で明確になったようだが、コロンビアから流入する大麻(マリファナ)もPCCの大きな資金源だ。