ニッケイ新聞 2008年12月6日付け
ドル通貨がレアル通貨に対し六日間続騰し為替相場は四日、遂に一ドルが二・五一九レアルとなったことを五日付けエスタード紙が報じた。これでドル通貨は、二カ月間に四〇%上がった。レアル通貨の下落は、コモディティの下落と中央銀行の為替介入が裏目に出たからと関係者は見ている。外貨準備高の実弾を持ちながら、為替相場の安定を図れない中銀は、これから批判の的にされそうだ。
ドルは二年半で、二・五〇レアルへ盛り返した。中銀は四日、六十七億ドルを為替介入に投入。さらに取引終了後、三億千四百六十万ドルのSWAP(通貨交換)取引を行った。それでもドル高騰には、期待するほどの効果がなかった。
リーマンの破綻で金融危機が本格化して以来、レアル通貨はドルに対し四〇%下落。他国の通貨に比較しても下落幅が大きいのは、コモディティ輸出国であるためと見られる。レアル通貨の動きは、コモディティ指数の動きに追従している。
中銀が効果的な為替介入を行うなら、コモディティ指数の動きを見ながら、先手を打つべきだと市場関係者は進言する。為替市場の動きを見ながらの介入では、後手になり相場に振り回される。
年末のドル高騰は、恒例でもある。多国籍企業は、本部が年度決算を行うため資金が必要になる。それで支部は送金を余儀なくされる。さらに為替先物取引を行った国内企業が、年度末決済を行うためにドルが必要になるのも一因。市場はドル通貨に適宜な相場を設定し、安定させたいと誰もが考えている。
ドル通貨と一般庶民の関係は、ドルが一〇%上がる毎にインフレが一%昂進すること。それが本当なら近日、物価は四%値上がりする。しかし、それがないのは、コモディティ下落とブラジル経済が低調なためだ。
経済学者のブランシェ氏は、ドル高騰の背景を次のように見ている。「不確定時代とは、相場が落ち着かないこと。中銀は為替介入を行って、相場を落ち着かせようとするが、一向に効果が見えない。中銀という舟が、相場の波に翻弄されている。船頭も自信を失ったらしい。指標も当てにならない」
「政府も自動車に建築に銀行にと色々手を打ったが、ついにドルは二・五〇レアルを突破した。ルーラ大統領が基本金利を下げろと命令したとき、中銀総裁はいうことを聞かなかった。これは危険な賭けだ。心配なのは高波が津波になった時。ブラジルの政権当事者は漕ぎ方を知らないからだ」と同氏は述べた。