ニッケイ新聞 2008年12月3日付け
業界が意気消沈するとき、砂糖価格の回復で生産者と精製所に活気が蘇った。特に短期融資で設備投資を行った精製所は、九死に一生を得た思いだ。サトウキビ加工業者は、来年度の収穫期、不確定経済で悩むのは、農業生産者ではなく銀行だといっている。
資金難は、業界の切実な問題だ。運転資金がないため農閑期に機械設備のメンテナンスをしなかった精製所がある。サトウキビの収穫が始まったら機械設備の故障が頻発し、サトウキビの山を前に機械を止め、生産を滞らせることになる。
精製所にとって収穫を前に考えるべきことは、機械のメンテナンスだけではない。銀行融資を突然停止されたため、農業資材の購入はできず、製品納入先との契約履行ができない。
Dataagro代表の話では、今回の危機では砂糖価格に大きな変動をもたらさないが、利益の縮小が新たな需要を生むと期待している。砂糖業界には相場回復の兆候が見え、低迷経済から抜け出せそうだという。
ドル高は、砂糖輸出を助ける。砂糖の国際価格が上がれば、国内価格も引き上げられ市場に活気が戻る。端境期にアルコールの在庫が少ないのも、砂糖価格の上昇に拍車がかかり有利だ。
ブラジルにとって幸運なのは、不況による海上輸送費の激減がある。サントスから黒海までの輸送費は六月、トン当たり百二十ドルだったのが十一月、二十五ドルへ値下がり。輸送費が安くなったため、ブラジル産砂糖は競争力がついた。
〇九年には、当初予定の四三カ所中、二十五カ所の精製所が新たに始動する。〇九年の砂糖生産は〇八年の三千四十万トンから三千二百九十万トンに増産、砂糖輸出も、〇八年の千八百八十万トンから二千百三十万トンへ増加と予想されている。設備稼働率が落ちても、砂糖輸出が増加傾向にあるのは製糖業界にとって慰めになる。