ニッケイ新聞 2008年11月29日付け
金融危機に発する財政危機の到来を視野に、政府歳出の削減に取り組む政府は二十七日、年金負担を減らす制度改革の下院審議を始めたと二十八日付けエスタード紙が報じた。ブラジル人の平均寿命が伸びたので、定年年齢の引き上げや年金掛け金徴収年齢の引き下げ、遺族年金や年金の低率調整が議題に上がっている。制度改革は、社会保障相や労組代表も討議に参加する。
ブラジルが高齢化と少子化社会へ入ったことで、一九九九年に制定された年金の最低条件は、変更を余儀なくされそうだ。年金制度保護のため停年年齢が引き上げられ、年金額上限も引き下げる検討が始まった。
パウロ・パイン上議(PT=労働者党)が提出した制度改革原案は、先行き破綻が明白な社会保障制度を守る内容だ。上院は承認し、下院の表決待ちとなっている。
原案によれば、今まで制限のなかった年金受け取り可能な年齢を六十歳に設定するほか、年金受給額の計算方法を最低給与をベースにしつつも別の方法にすることが含まれている。さらには、受給開始後の調整率を下方修正するなどの変更点がある。
これで年間九十億レアルの節約になり、社会保障院の赤字は少しずつ減る計算。長生きするほど、悲哀の度が上がる。政府は、最悪のシナリオ「社会保障制度の破綻」を避ける大義名分で話し合いに応じる意向だ。
前回制定した年金の最低条件、停年年齢や掛け金の徴収期間などの変更には、議会の五分の三以上が支持する連邦令の補足令制定が必要。先細りの社会保障制度ではなく、安心して頼れる制度を政府は欲している。
現行の年金制度が現実的でないので、代替する折衷案をルーラ大統領が求めた。大統領の考えによれば、現行の社会保障制度は掛け金を支払った期間より、受領する期間のほうが長い停年退職者が多数いるのを解せないといっている。
頑健な体を持っているのに、停年でブラブラしているのは悪いと大統領がいう。しかし、パイン上議の改革案は晩年が侘しくなるから、もう少し希望の持てる制度が欲しいと大統領が所望した。