ニッケイ新聞 2008年11月29日付け
「火事見舞いには火」「水害に水」の古諺があるけれども、洪水や濁流で家屋が水没した人々にとって「清澄な飲料水」ほど有り難いものはない。ルーラ大統領もジャンバー姿で現地に飛び「過去最大の環境被害」と述べ巨額の緊急支援を決定したが、それほどにサ・カタリーナ州の水禍は酷い。ドイツ人が拓いたあの山国は昔から何回も水に襲われている▼古くは若宮丸の漂流民がロシア艦船に乗り立ち寄ったフロリアノポリス沖の低気圧が豪雨と暴風となりイタジャイ渓谷を急襲したのが、この大水害の始まりだった。年に一度のショッピ祭りとクリスタルで有名なブレムナウは、ドイツ料理がめっぽう美味なところで観光客が押し寄せる。市民が3万人近くの小さな町だが、母国の古里を偲んでかドイツ風の家もありとても落ち着いた景観を誇る▼その綺麗な街並みも側を流れるイタジャイ・アス川の氾濫でひと飲みにされ住民ら20人が犠牲になっている。あの川はとても澄んでいて惚れ込みそうなのにーときには大暴れする。下流のイタジャイも、この川の濁流によって町は冠水し土砂崩れもあり莫大な被害を蒙っている。民家も街路も浸水し市民らは舟で避難し、食糧や衣類の救援袋を運んでいる▼雨はまだ降っているが、溺死などの犠牲は今の99人を余り超えることはあるまいーと信じたい。サ・カタリーナの東部9市の被災者は8万人に近く、州面積の30%に泥流が押し寄せたという。これから復興へと力を投入しなければならないが、ぜひー頑張ってほしい。あの素晴らしいブルメナウの美しさを取り戻すためにもー。 (遯)