ニッケイ新聞 2008年11月27日付け
水害の被害が大きかった都市の一つ、サンタカタリナ州イタジャイ市で二十五日、食料に困った市民多数がスーパーや無人の民家を襲い商品などを略奪と二十六日付けエスタード紙が報じた。数々の都市は、交通止めで孤立化しており物資の供給が困難。市民は空腹で自暴自棄となり、混乱状態から無法地帯と化したようだ。盗品の即売や犠牲者を身許未確認のまま埋葬するなどが行われているとの報道もある。
イタジャイの市民多数は、スーパーに押し入り食料を略奪。汚水に浸った食品や腐臭を放つ生肉まで、手当たり次第に盗んでいる。
同州保安局は、当直の二〇%増に非常召集をかけ、盗品運搬に使ったボートを破壊した。ウオル・マートやMaxxiなどの大型スーパー四カ所に非常線を張ったが、多勢に無勢で治安当局側は押し倒された。
水害を免れた地域のスーパーや商店も、同じような略奪に遭ったところがある。市民は真っ暗闇のスーパーの中を、手探りで盗品を運び出した。
盗品市が出現し、盗品の飲料水が二十レアルで飛ぶように売れた。被災者用に配給するため保管していた飲料水なのだ。通常通りに営業する店やガソリン・スタンドのコンビニには、食料を求める人で列ができた。
イリョッタ市のサッカー場はヘリ・ポートになり、住宅の屋根で助けを求める被災者を運んだ。同市の人口は一万八千人、真中をイタジャイ・アスー川が流れ、川の左側は阿鼻叫喚の巷と化した。同市は十八人の犠牲者が出ている。
同所では土石流が続発し、通りがかりの市民が生き埋めになっている。住民は犠牲者の身許確認もせず、直ちに埋葬している。埋葬した犠牲者の名前も数も知らないと、住民はいう。
イリョッタ福祉施設に勤務するテレーザさんは、九死に一生を得た体験を語った。「二日間降り続いた日の夜中、轟音で地響きがした。三日目の午後、裏山が地割れし大きな穴の中に陥没した。その中へ親族や知人が埋没した。自分も命からがら逃げたが、地面がぬかるんで前へ進まなかった」という。