ホーム | ブラジル国内ニュース(アーカイブ) | 伯銀がサンパウロ州銀を買収決定=金融再編に拍車かかる=一気にサンパウロ州最大規模に=「セーラに有利」との声も

伯銀がサンパウロ州銀を買収決定=金融再編に拍車かかる=一気にサンパウロ州最大規模に=「セーラに有利」との声も

ニッケイ新聞 2008年11月22日付け

 米国発金融危機でブラジル金融再編に火がついた――。ブラジル銀行(伯銀)はサンパウロ州立銀行ノッサ・カイシャ(州銀)を五三億九〇〇〇万レアルで買収すると、二十日に正式発表した。二十一日付け伯字紙各紙によれば、業界第一位回復を目指す伯銀はさらに買収交渉を進めている。サンパウロ州政府は、この資金を使って零細企業向け融資事業、メトロ建設などに使う予定。二〇一〇年の大統領選挙に向けて、野党最有力候補といわれるジョゼ・セーラサンパウロ州知事にとって「ルーラから有利な交渉をもぎとった」との評価もあり、今後の政治展開にも関心が集まりそうだ。
 昨年暮れのサンタンデール銀行によるレアル銀行買収に始まり、九月からの米国発金融危機を背景に、今月初めのイタウー銀行がウニバンコ買収を発表して、伯銀が長年占めてきた国内一位の座を奪ったことで金融再編に火をつけた。
 巻き返しを図る伯銀は六カ月間の交渉を加速させて二十日に州銀買収を発表したが、それでも二位のままなので次なる標的を狙っている。エスタード紙によれば、ピアウイ州立銀行の吸収合併を先週公表、ブラジリア銀行とは交渉前進、「ボトランチン銀行とは金額の折合いだけ」という。
 従来、サンパウロ州での営業が弱かった伯銀としては、〃産業の機関車〃であるサンパウロ州を拠点とする州銀は、喉から手が出るほどほしかった。そのため、株式の時価総額の二・三七倍にも関わらず、買収を決めた。これにより、伯銀は州内支店数を七七二から一三二四支店に増やし、サンパウロ州内では最大の銀行になった。
 九四年には上位五行の資産規模を合計しても四八%にしかならなかったが、現在は上位三行で五〇%、五行なら七九%にもなり、再編が進んで大型化している。
 新ランキングでは1位=イタウー・ウニバンコ(総資産五七五一億レアル)、二位=伯銀・州銀(五一二三億レ)、三位=ブラデスコ(四二二七億レ)、四位=サンタンデールABN(三二八一億レ)となった。
 伯銀からサンパウロ州政府への支払いは、来年三月から約三億レアルの十八回払いで、金利を入れた支払い総額は約七六億レアルになる。
 セーラサンパウロ州知事は、このうちの一〇億レアルを投資して零細企業振興局を作り、融資を行う計画だ。それに加え、メトロや都営鉄道(CPTM)の拡張工事に投資すると発表している。
 フォーリャ紙によれば、これはサンパウロ州議会の承認をえる必要があるが、ジョゼ・カルロス・ボス・デ・リマ議長は「緊急案件として審議すれば一週間で承認されるのでは」と楽観視している。
 エスタード紙は、この投資は次期大統領を狙うセーラ知事に手柄をあたえる原資となり、ルーラ政権の目玉政策PAC(経済活性化法案)のお株を奪われるのではと、与党・労働者党(PT)内では心配する声もでているという。