ニッケイ新聞 2008年11月19日付け
サンパウロ市の公共交通機関利用が進み、十月のバス、地下鉄、都電の利用者は前月比四・〇六%増の延べ四億八三万人と十七日アゴーラ紙が報じた。
公共交通機関利用者の増加は、経済成長、ビリェッテ・ウニコ普及、乗り継ぎ利用増加が原因というが、〇四年~〇八年十月の平日の利用者数は、バス三二・三%、地下鉄三三・二%、都電四八・八%の増加。特に、ビリェッテ・ウニコがバスと地下鉄、バスと都電という乗り継ぎに利用できるようになった〇五年以降の平均伸び率は、地下鉄九・五七%、都電一二%となっている。
これらの数字から考えられるのは、サンパウロ市の衛星都市の拡大。サンパウロ市近郊からの通勤、通学者増加も都電利用者増加の一因だ。
これに関連するのは、アニャングエラやバンデイランテスといった高速道沿いやパライバ盆地の市への転入者増加との十六日エスタード紙記事。工業部門進出もあり、一日一人の割で人口増のソロカバ市や、サンパウロ市まで五〇分程度で通えるため、住宅購入者の三分の一はサンパウロ市からの転入者という内陸部の不動産業者の話など、サンパウロ州内の人口分布に変化が見られ、カンピーナス市在住でサンパウロ市勤務の男性などは、サンパウロ市の半額程度で家屋が購入でき、生活費が安い、緑が多い、安心して生活できるなどの利点を挙げ、一日一〇〇キロの通勤も、苦にならないという。
一方、人口増が進むサンパウロ州内の都市では、サンパウロ市の交通事情は将来の自治体の姿。五日エスタード紙によれば、カンピーナス市やサントス市では、ビリェッテ・ウニコやバス専用路線設置、トラックの乗り入れ規制、地下駐車場などのサンパウロ市のプロジェクトを真似しているとある他、二〇〇〇年一月と〇八年九月では、サンパウロ市以外の地域の車は三二・八四%(サンパウロ市二二・三%:以下同)増の他、バイク五八・七%(五二・三%)増、バス二五・一%(一四・六%)増、トラック一六・二%(〇・五%)増ともいう。州内で車両総数が二〇万を超える市は一一あり、交通量増加に対応した市街化作り計画や、速度違反や飲酒運転頻発の問題への対処も必要だ。
リオ市~サンパウロ市~カンピーナス市を結ぶ高速鉄道完成後は、サンパウロ市から流出する人は益々増えるとも考えられるが、公共交通網整備は衛星都市化も進むサンパウロ州の交流・交易円滑化のカギでもある。