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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2008年11月19日付け

 米国であったG20緊急首脳会議は「新世界秩序への第一歩」という論調で論じられる場面が多い。世界を先導してきたのはG7(日米欧の主要先進七カ国)だ。その初会合があった七六年には、国内総生産の合計は世界全体の七割を占めていた。だから、世界を牛耳ることができた。ところが、ロシアを加えたG8が現在占める割合は五八%に過ぎない▼七割を確保するには中国、インド、ブラジル、南アフリカ、メキシコという新興国の計一二%を足す必要がある。世界の意思決定は、このような考え方に基づいている▼今までは財相レベルの会合だけだったG20が、今回始めて首脳レベルで行われた意義は大きい。今現在で具体的成果がなくても、枠組み自体が変わったことに意味がある。来年四月の第二回会議までに実際の交渉が行われる▼視点を人口比に移すと興味深い。G7には〇〇年時点で七億人強しかいなかった。つまり、世界人口の一〇人に一人弱が、世界経済の六割を享受していた。そこだけの考え方で世界を動かしていた▼G20には世界の三人に二人が属している。つまり、G7の次に豊かな一三カ国に世界の一〇人に六人ぐらいが住んでいる。そのうち四人は中国人とインド人だ。人口比で考えればG20の方が、より多くの世界市民の意見が反映される民主的な枠組みだといえる▼逆に考えれば、世界経済の残り三〇%は一九二カ国中の百七二国で分け合っている。日本は一国で世界のGDPの九・一%を占める。日本に生まれただけで、それだけの豊かさを享受できる幸せを、日本の日本人はどれだけ気付いているのだろうか。 (深)