ニッケイ新聞 2008年11月13日付け
欧州連合(EU)諸国で不法移民排斥の動きが高まるなど、国外滞在のブラジル人に対する迫害も増えたというが、ブラジル法務省では逆に、国内在住の不法滞在者に対する特赦のための法案準備と十二日伯字紙が報じた。
十一日にブラジリア開催の第一回「不法移民と人身売買に関する国際セミナー」に出席した法務省のバレット局長が明らかにしたもので、年内に作成予定の特赦法案対象者は四~五万人。同局長は、「ブラジルは(不法入国者を)迫害することも罪に定めることもしない」とし、国内の不法滞在者は連邦警察から手厚く取り扱われているという。
人種の坩堝であるブラジルでは、不法滞在者、不法入国者も様々な国籍や経歴を持つが、同局長の発言で注目されるのは、人身販売を行なう犯罪者と被害者として不法入国、不法滞在となった人々を区別していることだ。
国内の不法滞在者数の多いのは、中国人とラ米諸国の人々。近年特に目に付くのはボリビア人だが、実際には、アルゼンチン人やウルグアイ人なども多いという。
特赦の対象制限に付いては、テーラ・サイトが全ての不法滞在の外国人対象と記載。本当なら、一九九八年に特赦の話が出た時に滞在合法化の申請が出来なかった人達には朗報となりそうだ。
一方、不法入国や不法滞在を生む原因の一つである人身売買は世界的な問題で、〇四年のポルトガルとブラジルとの会議などでも取り上げられた国際犯罪の一つ。被害者は半奴隷状態で働かされる男性や売春婦として働かされる女性などが多く、被害者の八三%は女性との数字もある一方、今回の特赦関連記事では、ブラジル人不法滞在者が多いのは米国と日本との記述。出稼ぎで労働条件が違っていた、不景気で首を切られた、日本で離婚したためヴィザ取得時と条件が変わったといった人達も数えられているようだ。
バレット局長は、国外のブラジル人からは、不当な扱いを受けた、牢にぶち込まれた、人権を無視されたといった苦情が絶え間なく寄せられており、ブラジルほど不法滞在者や不法入国者を手厚く扱う国は皆無だという。その発言からは、ブラジル人不法滞在者を手荒に扱う国々の対応の変化を期待する様子が伺われる一方、英国がブラジル人にヴィザ取得を義務付けるなら、ブラジルも同様の処置を取る可能性があることも示唆したという。