ニッケイ新聞 2008年11月7日付け
国際的な金融危機の影響を受けてブラジルの証券市場は十月、過去十年で最高の四十六億三千九百万ドルが引き揚げられ、先行きが案じられると六日付けエスタード紙が報じた。
中銀発表によれば、政府が一九九九年一月に為替政策を変更し、完全自由変動相場制移行に踏み切って以来の出来事という。政策変更当時は、レアルが大幅に切り下げられた形となり、八十五億八千七百万ドルも引き揚げられたことがある。
投資家は十月、ブラジルでの投資リスクを警戒して一斉に資金を引き揚げ、母国へ持ち帰った。それに、多国籍企業の利益送金や配当金の送付が加算した。これを資本市場の流動現象と呼んでいる。総額では六十二億四千九百万ドルになる。
さらに貿易赤字が、外貨収支に重荷となってのしかかった。資本収支や貿易収支を総合すると、僅か十六億千万ドルの黒字に留まった。これだけでも寂しいのに、もっと悪い事態を覚悟する必要がありそうだ。
中銀のデータによれば、証券市場から引き揚げた外資は大きい。計画的な先物の売り逃げがあったらしい。証券市場は、もはや資金調達の場所ではなくなった。
為替業者の見方によれば、十月は最悪の月であったようだ。関係者には「暗黒の十月」が、峠という観測がある。しかし、昨年も十一月が峠と思った後、ベアー・スタンス銀行が経営危機に陥った。米金融危機は底の深さが測り難いため、いつまた悪化するかはまだ分からない。
ブラジルでの外貨動向には、外的要因の他、二〇一〇年の大統領選の行方が影響する可能性があると関係者が警告。大統領選をめぐるロウセフ官房長官とセーラ知事の発言や、債務不履行の発生、所得と雇用の状況などで、〇九年の外貨動向は変化する。