ニッケイ新聞 2008年11月1日付け
先月五日に投開票が行なわれた統一地方選。サンパウロ市議会選挙は四十五の議席に一千人以上の候補がひしめく激戦となった。日系人の候補も二十九人が〃乱立〃。結果、現職の野村アウレリオ市議(PV)が惜しくも落選し、前回の当選数四人から二人へと半減した。当選を果たしたのは、いずれも現職の羽藤ジョージ(PMDB、58)、神谷牛太郎(DEM、62)両市議。今年は市議会百周年委員会のメンバーとしても活動してきた両氏に、選挙戦の感想、今後の抱負などを聞いた。
「日系社会の方々に心から感謝したい」――。七期連続のサンパウロ市議当選を果たした羽藤氏は十月三十日来社し、選挙協力に感謝の意を伝えるとともに、今回の選挙戦を振り返り、今後の政治活動について報告した。
羽藤氏は日系候補者中最多得票となる四万八百四十七票で当選した。全体では十七位。
サンパウロ市の日系市議が二人に留まった要因は、日系候補者の乱立にあったと指摘。「最大でも五、六人に抑えれば全員が当選できた」。また、資金が豊富なブラジル人候補者の積極的な選挙活動に押されたとも分析する。
同市議によれば、十年ほど前までは、日系票の三分の一が日系候補に入っていたが、最近は減少傾向にある。得票を増やすためにも、「今後できれば日本にいるデカセギのブラジル人も投票できるように政界に働きかけていきたい」という。
大手ビール会社の反対を受けながらも、今年八月から施行された飲酒運転の基準を新しくした法律(通称レイ・セッカ)は、元々は同市議が八年前に成立させた法案が基底になっている。これに関連し、今後、バールの営業時間を現状の午前一時までから午後十一時までとする案を議会にかけたいと意気込む。
治安対策については、オートバイの二人乗りを平日中は禁止する法案を提出する予定でいる。「銀行で発生する強盗の六二%がバイクの二人乗りのブラジル人によるもの」であることから、その抑制策として、高い効果を期待する。
また、今年八月以降、サンパウロ市東部で集中的に発生した日系家庭を狙った少年グループによる侵入強盗事件に関しては、「被害のあったヴィラ・プルデンテの日本人会が、少年にも実刑が与えられるように法律の改正を求めて百万人の署名活動を展開する計画を立てている。私もそれに積極的に支援したい」と語る。百万という数については、「サンタクルス病院の返還時にも集めることができたから可能だ」と説明した。
羽藤市議は一九八二年以来、同一政党で、二十五年間連続でサンパウロ市議を務めるベテラン。「私は訴えられたこともお金を盗んだこともなく、まじめに働いてきた」と語る。今後のキャリア展望に触れて「政治家は夢を持つべきだ」と述べ、連邦下議への挑戦に関しては「党の支持と許可があれば」と笑顔を見せた。
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サンパウロ市北部出身で沖縄県系二世の神谷氏は二万九千九百十五票を獲得して三十八位。八九年~九四年まで二期連続でサンパウロ市議、その後九四年から連邦下院議員を一期務めた。その後、〇四年に再度サンパウロ市議に当選し、今回、四度目の市議当選を果たした。
「今回の当選は、私を信用し、勇気付けてくれた多くの友人のおかげ。とくに、縫製や化粧品、建設資材、スーパーなどの沖縄県系人同業者グループ、県人会関係者や、聖北文化体育連合はじめ聖北の日系コミュニティーから多くの投票を頂いた。心から感謝したい」と話す。
今年は移民百周年を記念して行なわれた、サンパウロ市リベルダーデ区内の象徴「すずらん灯」改修プロジェクトの発起人として、その実現に尽力。全四百三十本ある灯のうち、ガルボン街やグロリア街など主要な通りの改修をすでに終えている。
これまで教育、医療に力を入れてきた神谷候補は、過去には「もったいない運動」を展開。古着などを一般家庭から寄付してもらい、恵まれない貧困家庭、慈善団体などに寄付している。新たな任期に向けては、サンパウロの環境対策により力を入れていく考えを示した。