ニッケイ新聞 2008年10月31日付け
中央銀行は二十九日、FRB(米準備制度理事会)と三百億ドル規模のスワップ協定(伯米間の通貨交換)を締結と三十日付けエスタード紙が報じた。ブラジルの外貨準備を切り崩すことなく、ドル通貨を為替市場に投入し、ドル資金のひっ迫を緩和させる。中銀は、その保証としてレアル通貨を提供した。これで金融危機へ対処する中銀の資金力は、経済政策に関係なく強化される。
FRBは、ブラジルの他にメキシコ、シンガポール、韓国に対しても同様の措置を採った。メイレーレス中銀総裁は、ブラジルが米国から期待される国の一つとして位置付けされたことに好感を示し、次のように通貨交換を説明した。
スワップ協定は、プラザ合意で円高が容認され、対ドル三百六十円から八十円近くまで円高が昂進したとき、日本の輸出産業が悲鳴を上げ、考え出した知恵。
日本の輸出企業が百億円を受注しても、受け取りは円高のため七十億円しか貰えない。それで受注と同時に、米国で百億円相当のドル建て融資を組んだ。決済は七十億円分のドルで済み、三十億円が残るので日本での損失を相殺。この金融取引を中銀が肩代わりし、スワップと呼んだ。
金融危機を原因とするドル高を緩和するため、同協定は為替市場の調整に役立つ。これまでの手持ち外貨切り崩しによるドル介入は、限度がある。やがて矢折れ、力尽きるときが来る。
通貨交換の権限は、暫定令四四三号によって中銀に付与された。国家通貨審議会(CMN)が認可した通貨交換の権限は、中銀がFRBの米通貨をブラジルで為替介入を行うために使用することを認めた。その代わり、その反対も起こり得る。
ルーラ大統領は、非常時に備え外貨準備高をブラジル経済の盾として、二千億ドルのレベルに保つよう提言した。FRB資金はIMF(国際通貨基金)資金と違い、ヒモ付きではないし必要に応じて随意に出せる。
通貨交換協定は〇〇交換協定のようなもので、手放しで喜べるものではない。妻が美人なのは、良し悪しだ。アラクルースやボトランチンのような優良企業が、多大な損害を被り経営に支障を来たしたから、スワップ協定が締結されたのだ。