ニッケイ新聞 2008年10月31日付け
ついにデカセギで「永住者」資格をもつ人が十万人の大台まであと一歩となった。法務省「登録外国人統計」によれば、二〇〇七年末で九万四三五八人を記録、今年も同じペースで増えていれば、すでに十万人を超している計算になる。一方、在日ブラジル人総数は三一万六九六七人と前年にくらべて約四〇〇〇人の微増。さらに日伯を行き来しているブラジル国籍者はここ数年減っており、定住化傾向がさらに強まるなど量的でなく、質的な変化が起きている事が伺われる。
7年間で十倍に
法務省入国管理局の「出入国統計」によれば、日本で「永住者」資格を取得したブラジル人は一九九六年には、九三一人しかいなかった。
景気後退局面に入った九八年以降、日本での滞在資格を確実化にするためか、永住者資格を取得するブラジル人が急増する傾向が始まった。
〇〇年=九〇六二人、〇一年=二万〇二七七人、〇二年=三万一二〇三人、〇三年=四万一七七一人、〇四年=五万二五八一人という勢いで顕著にその傾向が現れた。
さらに、〇五年には六万三六四三人と年間約一万人増のペースになり、〇六年の統計では七万八五二三人と、前年から一万四八八一人も増えた。
このほど発表された法務省統計によれば〇七年には九万四三五八人であることが発表され、前年比一万五八三五人増となり、同じペースなら今年中に十万人を越えるのが確実な見通しとなった。
一方、総数の増加にはかげりがみえてきている。〇〇年時点での在日ブラジル人総数は約二五万人だったが、〇七年末時点で三一万六九六七人、〇六年の三一万二九七九万人より約四〇〇〇人と微増だった。バブル崩壊後、日本の不況が本格化した九七年から九八年には減少したが、それ以来一貫して毎年一万人程度増えつづけてきたペースが減速した。
それでも、在日全外国人数の約二一五万人中、中国人、韓国・朝鮮についで三位、一五%前後を維持している。
在日ブラジル人の資格動態を詳しく見ると、主に三世に与えられる「定住者」資格は〇〇年来、一五万人前後で推移している。変化しているのは、主に日系二世に与えられる「日本人の配偶者等」が漸減している点と、その分、「永住者」が増加し、全体の三分の一に手が届くところまできている点だ。
同広報資料によれば、訪日するブラジル国籍者も〇五年から年々減少傾向にあることが分かった。国籍別外国人入国者数によれば、〇五年は九万一二六八人、〇六年は八万五五九二人(前年比六・二%減)、〇七年は八万〇九一二人で前年比五・五%減だった。
新規入国者は〇五年の四万六六八〇人以来減少しつづけ、〇六年四万〇八九七人(前年比一二・四%減)、〇七年は三万七五二七人で八・二%減を記録した。
金融危機の影響
新規入国者が減っているのは、帰伯する際に再入国許可をとっているケースが増えているからのようだ。在日総数は増加を続けていることから、訪日希望者はあいかわらず多いが、景気の先行きへの不安から、旅行や移動に消極的な機運がコミュニティ内に生まれていると推測される。
行き来が減っている背景には、日本育ちのブラジル人の若者も増え、帰伯する必要性が薄れてきている可能性もある。滞在資格も「永住者」が三分の一近くを占めるようになり、全体として、より日本に比重を置いた生活を伺わす数字になっており、量的よりも質的な変化が起きている。
ただし、九月からの世界金融危機による失業者増により、帰伯者が増えているとの報道があり、ここにきて、来年に向けて総数が減る可能性がでてきている。