ニッケイ新聞 2008年10月24日付け
「最悪。もう事務所たたもうかって本気で考えてるよ」。デカセギ派遣をする知人はガルボン街で、通りすがりにそう嘆いた。「日本が不況でデカセギの失業者がすごい数らしい。そいつらがどんどんブラジルに帰ってきている。どうなってんだ、今回の金融危機は」▼日本経済の動向がデカセギ求人に数カ月前に現れる傾向があることを、勝手に「デカセギ先行指標」と命名している。例えば長野県の精密機械産業の求人広告が在日ブラジル人向けポ語新聞に掲載され、サンパウロ市の派遣事務所に要請書が山済みになっていれば、数カ月後にはそれが生産増という形で実体経済に現れる。その予兆が同指標だ。派遣業者はその最前線にいる。今回はかなり深刻だ▼実際、財務省発表の九月の貿易統計速報によると、日本の貿易黒字額が前年度比で九四%も減少。なかでも米国向け輸出は前年同月比約一一%減と、一三カ月連続減を記録している▼輸出が減れば、日本の工場は生産調整に入り、デカセギは解雇される。失業期間が長期化しそうなら帰伯する。しかも、急激な円高が輸出減に拍車をかける。今年は八月まで好調だったから年内の経済統計は急激に悪化しないが、本当の悪影響は来年顕在化する。今は時給を下げられても我慢しているデカセギが多いときく。今の仕事を辞めても新しい職はないからだ▼知人が言った「最近じゃ日本に送ってもすぐにクビ。日本の会社は何カ月の契約って絶対言わないから。それじゃデカセギに飛行機代を貸し付けて送っても回収できない。そんなに簡単に辞めさせるなんてデカセギはモノと一緒だ」との捨て台詞が耳にこだました。(深)