ニッケイ新聞 2008年10月22日付け
十六日サンパウロ市で起きた市警と軍警衝突や、サンパウロ州サントアンドレで十三日発生の人質事件でエロアーさん死亡など、目に付く事件が続いたが、二十一日フォーリャ紙に「ブラジル人は日々起きる蛮行に慣れ、常軌を逸した時にのみ反応」との論説。
論説では、リオのファヴェーラでの警察特殊部隊作戦を取材したスペインの新聞記者が、「恐ろしい」と評した事と対比し、「事件が報道されるまで時間がかかることこそが恐ろしい」という。
同紙が常軌を逸した一つとした人質事件のその後では、二十一日グローボ・サイトが、エロアーさんの葬儀には二十日から二十一日九時までに三万九〇〇〇人、九時過ぎの埋葬にも一万二〇〇〇人参列と報道。また、一年半待った後、三九歳の誕生日の二十日に心臓移植を受けたパラー州女性は、一月からサンパウロ市に滞在して手術実現を切望していた他、肺は二年間待っていた一八歳の女子青年に、すい臓と左の腎臓は二五歳の男性に、肝臓は一二歳の少女に移植された、と二十一日伯字紙。
一方、同じく常軌を逸したとされる市警ストに関しては、十八~二十一日伯字紙が、スト中の市警に荷担した市警特殊部隊の懲罰問題や、セーラサンパウロ州知事の発言を受けてサンパウロ市長候補や政治家が丁々発止、軍警の組合もサンパウロ州知事は給与問題を政治問題に摩り替えようとしていると反発し、自分達も給与では泣いていると訴え始めた、州側が新たな給与調整案を提示しスト収束の見込みといった記事を報道。
また、二十一日伯字紙で目立つのは、リオ市で二十日、解雇を恐れた青年が、大手スーパーマーケットの「Senda」創業主アルツール・センダ氏の自宅を訪問。落とした銃を拾おうとしてセンダ氏ともみ合い、誤って発射された弾で同氏が死亡、という事件など。確かに、蛮行といわれそうな例は検挙に暇ない。
人質事件に絡み、「同じ年頃の娘が二人いて人事と思えない」という軍警や、「多くの国民の命を救うための治安強化、改善の必要を知りながら、政治家が本気で取組まないまま長時間経過」との社会学者のeメールも紹介するフォーリャ紙論説。現実の事件との間に、銃所持問題、超小型カメラなどの最新機器配備の不足、警察官の評価や訓練など、多くの課題も浮き彫りにされた。