金融危機対策=中銀に債権購入権限を付与へ=中小銀救済に動く=即時即決で緊急対策令発表=信用危機の本土攻撃に
ニッケイ新聞 2008年10月8日付け
金融危機がブラジルにも波及し始めたことで、ルーラ大統領は中銀に対策を依頼した。政府は六日、中央銀行が中小銀行の債権購入で金融支援を行う権限付与の暫定令を作成し、官報に掲載する予定だと七日付けフォーリャ紙が報じた。これは国際的な金融危機からブラジル経済を守る対策として、欧米並みの権限を中銀に付与したもの。サンパウロ市証券取引所は六日、欧州の金融混乱を受けて大暴落をした。
サンパウロ市証券取引所で株価暴落のため二回も取引を停止したのは、六日が初めて。政府は同日夜、緊急対策として中銀による債権買い上げで金融活動を促進し、資金枯渇の国内市場に公的資金を投入、金融危機を食い止めることを決めた。
さらに中銀は、国際的な商業活動を営む企業へのドル建て融資も容認された。中銀が対策を練り、政府はそれを官報に掲載し、近日中に通貨審議会を開いて暫定令を条例化するとフォーリャ紙は報じた。
メイレーレス中銀総裁は、経済活動の保護対策第一弾と位置付けた。欧米では死に体状態にあった金融市場が、中銀の資金注入で小康を得た。FRB(米連邦準備制度理事会)は、政策金利を二%に下げ、インフレ差し引きのマイナス金利を決めている。
それでも欧米の証券取引所は、株価指数の最低線を割り機能不全にある。投資家はコモディティから資金を引き出し、マイナス配当でも当面一番安全といわれる米国債に避難している。
経済専門家のミング氏は、今回の金融危機をエカトンベ(古代ギリシャで一度に百頭の牛をいけにえとして捧げる行事)と呼んだ。人間は性懲りもなく、同じ愚を周期的に繰り返すという意味。
震源地米国では八千五百億ドルの金融支援を投じたが、焼け石に水と同氏はいう。次の手は資金注入ではなく、行政介入しかない。ブラジルでは、ドル高騰でインフレ到来が浮上している。
ブラジルの緊急対策には、非常時対策がない。欧米の銀行は、クレジットの蛇口を閉めた。ブラジルは、まだ開いている。軍政末期のようにブラジルは、避難列車に乗り遅れないか。
財務相と中銀総裁が、危機対策は万全という。家宝の外貨準備高で、中小銀行が持つ先付け小切手を引き取るというのだ。為替が微妙なときブラジル経済の基礎ではなく、経済環境の変化が心配だ。ブラジルはドル債権国だが、米国と抱き合い心中はできない。