スチグリッツ談=農業バブルに警鐘=資本強化と信用回復で突破
ニッケイ新聞 2008年10月8日付け
ノーベル受賞者のスチグリッツ経済学博士が六日、ブラジルで農業バブルの崩壊が起きると警告したことを七日付けエスタード紙が報じた。
国際的金融危機が、ブラジル農業に波及し、バブルの崩壊は避け難いと同博士がいう。営農資金の枯渇は長期にわたるので、営農システムも工夫する必要がある。
今回の金融危機は、欧米が体質的に抱える問題だと指摘。米国の過ち、特に不動産ローンの危険は誰もが認識していた。だが最悪事態は、まだ来ていない。
十年前、米政府が「我々は先進諸国に信用付与を要請しない」との支援不要声明を発表したことに対し、世銀の財務担当であった同博士は、その時すでに、米国の高みにたった態度に警告を発していた。
米経済のあり方とFRB(連邦準備制度理事会)の対処にも、信用危機の責任がある。米国はブラジルのように、危機に学ばない。ブラジルは七〇年代、石油危機を理解できず借金を続けた。八〇年代、そのツケである悪性インフレに悩んだ。
ブラジルでこれから、苦境にたつのは農業だ。ドル下落で多くの投資家が、コモディティに投資したから農業バブルを形成した。それがクレジット枯渇で融資が止まり、残った借金の決済に生産者は困るようになる。
これからコモディティは弱気市場になる。ブラジル農業は打撃を受け、期待された農業大国は、受難の時代を迎えるという。
ブラジルは、危機に対処するため銀行の資本強化とクレジットの回復が急務。しかし、外資の流入は当分期待できない。
欧州はマーストリヒト条約により、金融支援を行った。その中に大量の米発行の不良債券が、交じっていた。この不良債券を始末するまでは、底なし沼に沈み続ける。
何故、米経済は悪化したのか。国債を大量発行してイラク戦争を行った。今はその借金を、世界が払おうとしている。「こんな馬鹿げた時代は終わりにしよう」と同博士は強調した。