ニッケイ新聞 2008年10月1日付け
【既報関連】ルーラ大統領は九月二十九日、米金融不安によるクレジット不足を緩和し、輸出企業を支援する緊急対策を考案するよう財務省や中銀で組織される対策会議に要請と九月三十日付けエスタード紙が報じた。ミゲル・ジョルジ産業開発相は来週までに輸出企業への特別融資案を練り上げ、大統領に提出する予定。
七千億ドルの米金融安定化法案が米議会で否決されたことで、金融パニックが世界へ波及した。政府は緊急対策として、国際金融の資金調達に苦戦する輸出企業の支援を検討した。
中央銀行は、流通正常化のために暫定措置として手持ち外貨を放出する。しかし、中銀が資金枯渇にあえぐ民間銀行に代わって、金融を機能させることはできない。
九月二十九日の緊急閣僚会議は「金融メカニズム」を設置し、国際金融が正常化するまで輸出に必要な資金を用立てることで意見が一致した。国際金融が窓口を閉めたため、まさに〝戦場に架ける橋〟だ。
経済関係の閣僚は、資金調達のチャンネル設置で宿題を課せられた。政府の懸念は、輸出企業の財政状態だ。サジアやアラクルースが、派生商品の金融取引に関与しドル差損を被った。同じような企業が、他にも多数あるらしい。
ドルは九月二十九日現在、二〇・四五%高騰。輸出為替の先役契約を交わした輸出企業は、軒並み多大な損害を被った。特に金融取引による含み益を見込んで、運転資金を投じた企業は誤った。
間接直接に輸出企業へ融資をするのは、中銀や社会開発銀行(BNDES)なりそうだ。これが総力を挙げて、輸出金融を支える。
輸出金融が至上命題ならば、民間銀行の企業向け手形割引や個人融資は開店休業になりそうだ。資金量の豊かなブラジル銀行も、短期の高利に切り替えるようだ。
金融安定法案が米議会で否決されたことを受けて、大統領はブラジル経済への深刻な影響と心構えに関する声明を発表した。米国がクシャミをすれば、肺炎を患わないまでも何らかの症状はある。何しろ世界一の巨人が病んでいるのだ。
七千億ドルの金融安定法案の否決は、金融市場に大きな衝撃をもたらした。資金枯渇は輸出ばかりでなく、輸入にも響いた。輸入注文のキャンセルが続出しており、こちらも早急な対策が待たれるところだ。