ニッケイ新聞 2008年9月26日付け
日本時間の二十四日、麻生太郎自民党総裁が国会の首相指名選挙で第九十二代内閣総理大臣に選出され、新内閣が発足した。日ブラジル会議員連盟会長、日伯交流年日本側実行委員会名誉会長をつとめる麻生首相は、企業駐在員としてブラジルに一年滞在した経験をもつブラジル通。さらに組閣にあたっては、日伯議連幹事長の河村建夫元文科相が官房長官に就任したのをはじめ、十七閣僚中、ブラジルに縁のある議員、ここ数年の間に来伯した議員五人が入閣するなど、まさに〃ブラキチ内閣〃ともいえる布陣になっている。新世紀の日伯関係にとっても期待の高まるこのたびの新内閣発足。ニッケイ新聞の取材に対し、コロニアの関係者たちが喜びと応援の声を寄せた。
祖父は吉田茂元首相、妹は寛仁親王に嫁いだという華やかな家系を持つ麻生新首相は、実家の会社の対伯進出にともなって約一年間ブラジルに滞在。政治家としては、昨年八月に現職外務大臣として九年ぶりに、今年六月には同議連に所属する十議員とともに百周年式典に出席している。講演で日系人を「善意の含み資産」と言い表すなど、中南米に対する認識は深い。
六月の来伯時にサンパウロ市のホテルで麻生首相を見たという南アゴスチーニョ敏男福岡県人会長は、「総理になるような人という印象だった。この百周年の年に首相になって良かった」と語る。
首相就任のニュースに、「嬉しいことですね。県人会の一世の人たちは大喜びで、すぐにでも祝電を送る予定にしてますよ」と嬉しそうに話した。
前福岡県人会長の松尾治・百周年協会執行委員長は、日本とブラジルの両方で麻生首相とは顔を会わせたという。「今の政権の中で物申す人が少ない中で、いい存在。毛並みは良いけど庶民的な感じがするし、ざっくばらんに話しやすい人」と印象を語り、「今年を新たな日伯交流のスタートの年として、交流を盛んにしていきたい」と期待を込める。
今年六月末に現職経済産業大臣として二十四年ぶりに来伯した甘利明氏(神奈川県第13区)は、内閣府特命担当大臣(規制改革・行政改革・公務員制度改革担当)に就任。滞在中はバイオ燃料をはじめ、デジタルテレビ、資源分野など両国経済の将来に関わる多くの重要案件をまとめ上げた。
来伯時に応対した神奈川文化援護協会の村田洋会長は「人当たりが良く、我々神奈川県人は良い印象を持っている。話をしていてスケールの大きい人だった。政治家としても感性があるし、とても有望な人物だと思う」と喜ぶ。
財務大臣・内閣府特命担当大臣(金融)に就任した中川昭一氏(北海道第11区)は、日伯首脳会談を受けてはじまった大臣クラスの相互訪問で、〇六年に農水大臣として来伯した。
ブラジル北海道協会関係者との懇談交流会に参加した高橋昭・同協会現副会長は、「返答がはっきりしていて、感じの良い人」と当時を振り返り、「海外に多くの日本人・日系人がいるのだから、海外に向けて頑張ってほしい」とエールを送った。
青年時代にブラジルを訪れ、九八年には外務大臣として移民九十年祭に出席した故・小渕恵三元首相を父に持つ小渕優子氏(群馬県第5区)は、戦後最年少(三十四歳九カ月)で内閣府特命担当大臣(少子化対策・男女共同参画)に就任した。
小渕大臣は〇四年に米州議会制度視察議員団のメンバーとして来伯。滞伯中は援協傘下の「あけぼのホーム」を視察したほか、県人会関係者との懇談会などを行なっている。
ブラジル群馬県人会の小渕民雄第一副会長は「親の七光りとして見られる可能性があるから、それをぬぐうだけのファイトを出してやってほしい」とエールを送り、「群馬の女性の気質で粘り強くやってほしい。今度は大臣として来伯してほしいですね」と再来伯を期待した。
文部科学大臣に就任した塩谷立氏(静岡県第8区)は、今年六月、日伯議連の百周年慶祝団の一員として麻生首相などとともにブラジルを訪れた。
議員活動では国外犯処罰(代理処罰)問題に尽力し、〇六年五月には、呼びかけ人となった十九国会議員の一人として、「在日ブラジル人集住地域議員懇話会」の設立にも携わっている。