ニッケイ新聞 2008年9月20日付け
国際金融の資金枯渇がブラジルにも影響を及ぼし中央銀行は十八日、資金調達のためドルを売り流通量を是正する意向と十九日付けエスタード紙が報じた。初回は十九日、五億ドルを売り、これで資金不足の市場を潤す。為替介入は中銀が銀行にドルを売り運用後、一定期間内に中銀へ同額返却する内応方式で行う。
為替市場は十八日、一時一ドルが一レアル九六センターボスにつけ、中銀はドル売りの再開を発表した。ドル売りは飽くまで緊急対処の暫定措置だといっている。
中銀のメイレーレス総裁は急遽、FRB(米連邦準備制度理事会)を訪問、為替介入が上限と下限を固定するための為替操作でないことで了解を得た。米金融危機で歪んだ為替市場を矯正するためのドル売りという。
国際金融の資金流動が停止したため、ブラジル企業は融資契約の更新に支障を来たし、不利な決済を余儀なくしている。融資の契約期限を守るため、倍額もする資金調達を強いられている。
中銀の説明によれば、ブラジルは外貨準備高が二千億ドル、スワップ(交換するための債券)で二百億ドルがあり、為替管理は磐石という。レアル通貨の流通市場は、平穏無事。問題は、ドル通貨の流通だけ。
ブラジルにとって外的要因による金融危機は、卒業済みと中銀総裁はいう。ブラジルはインフレに数値目標を設置するだけで、為替に数値目標はないと豪語した。
しかし、ドル通貨の高騰は、インフレ圧力をもたらす。ドルが一時一レアル九六センターボへつけたとき、誰もがインフレの到来を描いた。九月だけでドルは、一八・二%上がっている。
ドル高は、二つのインパクトがある。一は、輸入品の高騰による物価上昇。二は公共サービスや家賃の高騰で、生活費が上昇気流に乗ること。しかし、コモディティの下落と基本金利の引き上げが歯止めとして、まだ効いているようだ。
ルーラ大統領は十八日、南リオ・グランデ州の油井落成式で「リーマン・ブラザースやメリル・リンチがルーラ政権の就任時、ブラジルは借金の決済が杜撰だから気をつけろといったが、現在の体たらくは何だ。他人のことを批評するヒマがあったら、自分のことでも気をつけたらどうか」と皮肉った。