ニッケイ新聞 2008年9月16日付け
日本とブラジルは遠い。修好条約を締結してからもう100年も過ぎたのに本格的な文化の交流には到っていない。この二つの国を繋ぐのは移民であり、25万人に及ぶ日本人たちは農業に於いて多大な貢献をして評価もされている。こうした基盤の上に日本の企業が進出し経済的な結びつきも強くなったのだが、文化についてはまだまだの印象が強い▼勿論、日本文化研究所は一つの成果と認めたい。今やジャパノロジー(日本学)を研究する学徒もいるそうだし、将来的には大いに楽しみなところである。こうした学術的な取り組みは結構なのだが、もっと一般の人々にも歴史や文学を紹介するような活動があってもいい。このような仕事を進めるには、広い意味での語学(日本人にとってはブラジル語)の修得とこの国の小説などの翻訳も必要になる▼これはブラジル側も同じであり、最近は吉川英治の「宮本武蔵」が翻訳されて好評と耳にするし、漫画など多くの作品が書店に並んでいるのは本当に嬉しい。無論、日本でもこうした動きが活発になっているの事実もある。先にはジ・フレイレの「大邸宅と奴隷」が鈴木茂氏の翻訳で出版され話題になったけれどもこうした地味な活躍を支える基盤が欲しい▼京都外大の田所清克教授や上智大学では三田千代子教授らもブラジルの歴史や民俗についての著書を幾つも発表し評判がいいそうだ。ブラジル学について日本の学界も決して闇ばかりではないのが喜ばしい。ただーこうした潮流もこの十数年なのはいささか残念ながら、近いうちにきっと花が開き万朶の桜となると信じ期待している。 (遯)