ニッケイ新聞 2008年9月12日付け
八月に大統領と県知事の信任投票が行なわれ、平静を取り戻すかに見えたボリビアで、中央政府と野党側の対立が激化。野党側県知事が立つ四州では内戦状態ともいえる状態となり、ブラジルでは、同国からの天然ガス供給が五五%以上カットされる可能性が出てきた。
ボリビアからの天然ガス供給はサンパウロ州などを中心に行なわれているが、十日に起きたガス輸送管爆破により同国からの供給量の一〇%にあたる一日三〇〇万立方米カットとの十一日伯字紙の報道は、同日の電子版フォーリャでは、五五%以上にあたる一日一七六〇万立方米のカットと変更。
これは、十日に起きた南部ジャクイーバ地区の輸送管爆破に続き、十日から十一日にかけて起きたベジャ・ヴィスタの輸送管損傷の影響だという。電子版フォーリャでは、ベジャ・ヴィスタでの損傷の詳細確認は出来ておらず、修復日数も不明と報道。同国のガス供給の七五%を受け取るサンパウロ州では、ガス配給会社のComgasが対策を検討し始めた他、ロボン動鉱相が、火力発電所はディーゼル発電に切り替える可能性を示唆した。
ボリビアの政情不安は、〇七年に野党不在の憲政議会で、エヴォ大統領が憲法改正案を強行採決したことに端を発したもので、以後、憲法改正のための国民投票の取消しや県の自治を認めるよう求める野党側との対立が続いていた。
この対立が激化したのは、四日に野党側知事が政府との対決を打ち出し、国外へのガスの供給カットを表明したことによるが、九日以降連日続く伯字紙報道によれば、ブラジルやアルゼンチンに接する国境地帯での車両通行規制や、空港占拠と運行阻止、税務署や農地改革院の占拠、電気通信公社Entelビルの放火、ガス会社占拠など、混乱はサンタクルース、ベニ、パンド、タリハの四県に広がっている。
当初は、平和的に始められた野党側の抗議行動に火を注いだのは、大統領による軍派遣。各地で反対派と軍の衝突も起こり、内戦状態はなかなか収まりそうもない。
また、同国駐在米国大使が野党側に荷担しているとして退去命令を出したエヴォ大統領。米国外交や、伯ア両国へのガス供給契約不履行による政治的、経済的問題など、エヴォ大統領にとって、頭の痛い問題がさらに山積されることになる。