ニッケイ新聞 2008年9月11日付け
九日フォーリャ紙、十日エスタード紙が、ブラジル社会には今も歴然とした男女格差、人種格差が存在すると応用経済研究院データなどから報じた。
フォーリャ紙は一九九二年と二〇〇六年のデータを比較。経済成長に伴う雇用増で人間開発指数も向上したが、指数向上に関連する社会的快適度改善につながる、手を汚さない仕事が国内では不足。非正式雇用も含めた職の不安定さ、性や人種その他による差別などの問題も現存しており、人間開発指数の向上率は不十分だという。
差別の主な対象は労働市場の七〇%を占める女性やパルドを含む黒人系労働者で、女性の就労率が高まり、給与面での差も縮まったというが、具体的な数字記載はない。
一方、エスタード紙は一九九六年と〇六年を比較し、同期間中の女性の給与平均は五六一レアルから五七七レアルに上がったが、まだ低水準と評価。並行して、同期間中の男性給与は九六二・一八レアルが八八五・五六レアルに低下とし、黒人系労働者給与が四八二・〇〇レアルから五〇一・九七レアルに上昇し、白人労働者給与が一〇四四・二二レアルから九八六・四九レアルに低下したと内訳を記載。
男性や白人労働者の給与低下と女性や黒人系労働者の給与上昇で格差縮小の論は成り立つが、人種格差は、給与の他、貧困層に占める割合や、居住区の上下水道普及率やごみ収集率などにも現れているという。五月十四日フォーリャ紙は二〇〇八年に黒人人口は白人人口を超えると報じたが、就学率や就学年数が低く、文盲率も高い黒人系社会が白人社会に伍して行く道のりは長そうだ。
また、女性就労率は九六年の四五・九%から五二・六%に上昇。一方、家庭内労働時間は男性が一〇時間で女性は二四・八時間など、女性の負担は男性の倍以上で、二五歳以上の女性のガン検診率四六・三%など、健康管理がなおざりにされる傾向も男性より強い。さらに、夫婦と子どもという家庭で女性が主権をとる率は九三年の三・四%から一四・二%に増え、独身も含めた女性主権率は二八・八%など、女性の立場や意見を尊重する傾向が高まってもなお、男女同権のレベルには程遠いとは調査担当者。
真の平等実現には、専門職などで先達となった黒人系労働者や女性の活躍、勇気をもった発言も待ち望まれている。