ニッケイ新聞 2008年9月6日付け
八月の車の販売はやや鈍化したが、トラックの販売は増加する中、バスやトラック用燃料であるディーゼルの硫黄分削減計画が頓挫。健康への影響も懸念されている。
今回頓挫したディーゼルの硫黄分削減計画は、二〇〇二年に決められたもの。現行の都市部五〇〇ppm、農村部二〇〇〇ppmを、二〇〇九年一月からは五〇ppmに削減する計画であった。
ところが、国の基準作成の遅れ、ペトロブラスの純化計画の遅れ、自動車業界のエンジン仕様変更の遅れなど、様々な要因で、八月二十七日エスタード紙が、〇九年一月からの五〇ppmのディーゼル(S―50)導入はサンパウロ市とリオ市のバスだけと報じた。
この計画頓挫は、七月二十六日エスタード紙にも、新仕様の車両の市場登場は早くとも二〇一〇年末と報じられ、誰もが予想していたが、四日、五日フォーリャ紙は、環境相は業界圧力などにより、〇九年の計画達成をあきらめたと報じた。
これにより、十日の全国環境審議会(Conama)では、〇九年一月から全国二三七市のバスにS―50導入、一〇年一月からS―50を都市部や都市部につながる高速道で導入、二〇一二年からは欧州で〇九年から導入される硫黄分一〇ppmのS―10導入、などを検討することになったという。
この計画変更で、〇九年~一一年に削減と予測されていた大気汚染物質八万四〇〇〇トンの削減も先送りされたことになるが、国内車両の一〇%を占めるディーゼル使用車(バスやトラック、一部小型車両)は、汚染物質排出量では四五%の責任者。国内輸送手段見直しなども総合的に考えないと、車両数、汚染物質排出量の削減は困難だ。
ペトロブラスのS―50生産は〇九年一月までには間に合わず、当面は輸入されるが、エンジンの仕様変更や二〇一四年に予定されていたS―10の導入前倒しの可否なども争点になりそうだ。
オゾン発生や、呼吸器系疾患やガンなど、健康面への影響も大きい計画変更だが、サンパウロ市での大気汚染に起因する病気での死者は一日一二~一四人。八月三十一日フォーリャ紙は、ブラジルのガソリンは精製度が低く、硫黄分は米国カリフォルニア産一五ppmに対し、一〇〇〇ppmなど、燃料全般の見直しも必要だ。