ニッケイ新聞 2008年9月5日付け
十年前に比べ、一世の数はどれぐらい減ったか。統計というのは、実に冷徹な数字をはじき出す。先日、日本の外務省は〇七年一〇月時点のブラジルの海外在留邦人数を六万一五二七人と発表した。「ちょっと少なすぎないか」と思って調べて愕然とした。年々減っているとは分かっていたが…▼憶えているだろうか。橋本龍太郎総理が来伯した九六年には八万九〇〇五人もいた。「約九万人」といっても良い数字だった。ところが、それからたった一二年しか経っていないのに「約六万人」といっていい数字になってしまった。大ざっぱな言い方をすると三分の二だ。確かにこの間、幾多の功労者が亡くなった▼細かく見て、さらに驚いた。九六年から九七年にかけての減少率を計算すると二・四%だった。年間で四二人に一人が亡くなったことになる。しかし、〇六年から〇七年にかけては五%だった。なんと二〇人に一人だ▼日本からの報道によれば、昨年まで国別でブラジルは三位だったが、今回五位に下がった。「外務省は移住者の高齢化が原因と分析している」という。世界全体の傾向としてはグローバリゼーションや交通機関の発達により、一貫して海外在留邦人は増え続けている。四〇年前の約三倍になったという▼ブラジルの在留邦人数が増加に転ずることは難しいだろう。どこまで減るのか、考えるだけで暗澹たる気持ちになるが、後継世代が来ない以上、受け入れなくてはならない現実だ▼一世激減が明白な時代であり、残された時間は少ないと感じる。我々はなにを優先すべきか。百周年を迎え、色々な意味で考え、覚悟しなければならない。 (深)