ニッケイ新聞 2008年9月4日付け
汎スザノ文化体育農事協会(ACEAS=森和弘会長)が主催する第一回アウト・チエテ地域日伯統合フォーラムが八月二十四日、スザノ日伯学園講堂で行われ、十三団体から約四十人が参加した。USP歴史学の教授や安部順二モジ市長の講演に聞き入り、日系団体にどう若者を引き込むかなどについて熱心に討論が行われた。十一月にブラジリアで行われる全伯統合フォーラムに向けて、アウト・チエテ地域の共通問題を話し合った。三回にわたり詳報する。
昨年、ブラジル日本文化福祉協会が主催した全伯統合フォーラムで、地域ごとに同様の催しを実施してほしいと要請したことから、今回の地方版開催となった。分科会で参加者は二つに分かれ、どう若者を引き寄せるかなどについて討論した。
まず東ルイス元同協会会長は、協会自体が会員減の苦難を乗り越える過程で、五年がかりでスザノ日伯学園を創設し、生徒の入学に連動した形で会員を増やすシステムにした経緯を説明した。
同協会に元々あった運動場、野球場、テニス場、プール、体育館などの充実した運動設備を活かし、日本文化を教える特色をもったコレジオを始め、会員が一丸になって運営に取り組んできたことを報告。〇六年一月に校舎一棟から開始し、翌年に第二棟、今年も第三棟を建て増しし、来年も増築を予定している。
連合会としての将来性に関し、東元会長は「会員が減少を続けている地区の団体はいずれ統合が視野に。続けるところは続け、力を合わせるところは合わせるという選択肢がでてくる」とした。
モジ文協などでは家族会員制なので、若い世代が世帯を独立させても「おじいちゃんが会員だから」と新会員にならない悩みが述べられた。ACEASでは二十五歳以上は家族会員の扶養とは認めない定款になっており、新会員増につながる工夫と紹介された。
地区の団体では、市役所と業務提携して資金援助を受け、周辺の貧困層子弟の教育施設として日本語学校を再利用し、地元住民から喜ばれている実例も紹介された。「日本からの協力はあまり望めないご時世になってきた。これからは、州や連邦政府の支援などの方法をお金を払ってでも具体的に調べ、そのやり方をみなで共有すべき」という意見がでた。
また、政府支援をもらうには「日系政治家というルートは不可欠。かつては連邦下議六~七人、サンパウロ州議四人いたころもあった。日系の存在感を失わないためには政治家を押し上げることも必要」との声もあった。
そのほか、「八月ごろはノロエステや北パラナでは大規模な盆踊りイベントが毎週あちこちで開催されており、夜遅い時間にはマツリダンスに切り替えて若者が集まって楽しんでいる。なぜ大サンパウロ圏ではそれがないのか」などの疑問も出された。
討議の結果、次のような提言がまとめられた。1)各団体がすでに持っている設備、百周年を機にできた新施設を有効利用する方法を考える。2)地域の団体が集まって共通の問題を討論する機会を定期的に設ける。3)政府の資金援助を受ける方法を探し、日系の存在感を示す働きかけを常に行う。
4)YOSAKOIソーラン、和太鼓、盆踊りやマツリダンスなどを盛り上げて若者が活躍しやすい雰囲気をつくる。
5)文化継承のためにできるだけ小さな頃からスポーツや文化などの日系活動に参加を促す。
6)日本文化の深みを知るには日本語教育が重要。今後は一般社会に日本文化を普及する方向性も強める。
最後に森会長は、ブラジル人の六~七割が「アナルファベット・フンショナル」(発音を聞くことはできるが内容を正確に理解できないポ語話者)であることを挙げ、「日系団体はブラジル社会に対し、もっと教育の面で投資・貢献できるはず」と呼びかけた。(つづく)
写真=あいさつする森和弘ACEAS会長