ニッケイ新聞 2008年8月28日付け
本文 ロライマ州ラポウザ・セーラ・ド・ソールで米作者と先住民が一触即発の状態で対峙するなか、最高裁は二十七日、先住民保護区の境界線と地形の審理を開始と二十七日付けエスタード紙が報じた。最高裁は、双方を刺激しない範囲で折衷案を模索する。インディオにも未開民族と有識者がいるので、線引きで一絡げにできない複雑な問題だ。
起案担当のブリット判事は、単刀直入には双方とも調停に従わないという。しかし、現在の状況も不都合だ。最も懸念するのは、先住民を怒らせ結果をこじらせることという。腫れ物でいうなら、膿みきっていない状態といえそうだ。
多くの判事は、最終判決を先送りすることを考えている。しかし、先住民問題は境界線の見直し基準の設定で先送りを繰り返し、長年放置してきた経緯がある。保護区の土地係争は、百四十四件の提訴が保留されままだ。問題の複雑さを諸官庁は、知らない。
応急措置として襲撃されそうな場所は、防御柵を設置した。同州には四万三千八百人の先住民が居住し、事あれば一致団結する運命共同体。広さは、ラポウザ・セーラ・ド・ソールだけで、サンパウロ市の十一倍もある。
ルーラ大統領は二〇〇五年、同地域を先住民保護区と認め、先住民以外の居住者に米作者も含め退去を命じた。先住民以外の居住者は、保護区内にある市街地や集落の集団退去で裁判所へ異議を申し立てた。
同問題は、大別して二つの見方がある。人権団体とカトリック教会、連邦政府は、先住民は生業を持たないため蔑ろにされるので、先住民の独自文化を守る明確な線引きで保護すべきだという。先住民保護は法律で定められ、先住民への接触を制限している。
一方、州政府と米作者は、保護区が州の面積を制限し、州経済は六%を失っているうえ、先住民保護区はベネズエラやギアナと国境を接し、治安対策や土地係争で紛争を起こしているという。
保護区の線引きは、地域経済の妨げで地政学的誤りという意見もある。地域産業で働く先住民が、多数いるからだ。無学で労働意欲のない先住民と高等教育を受けた先住民有識者もいる。先住民全体を未開民族と考えるのは無理がある。