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大統領府=カリウム鉱山の売却撤回=PBと政府、同舟異夢=戦略物資を知らない公社=農業立国の悲願、肥料自給

ニッケイ新聞 2008年8月23日付け

 大統領府は二十一日、ペトロブラス公社(PB)がカナダのファルコン社へ一億五千万ドルで売却したアマゾナス州北ノーバ・オリンダのカリウム鉱山取引きを撤回と二十二日付けエスタード紙が報じた。カリウムは、肥料三大要素の一つで農業立国を目指す、ブラジルにとって戦略物資とされる。
 カリウム鉱山の売却は、ロウセフ官房長官を怒らせたようだ。カリウムは、燐酸や窒素に並ぶ肥料三大要素の一つであり、ブラジルはこれまで輸入に頼ってきた。農産物の国際市場支配を目指すブラジルは、カリウムと燐酸が国内にないのが泣き所であった。
 そんな折、ようやく発見したカリウム鉱山を国外企業へ売却するのは、無神経にも程があるというのだ。官房長官は、ペトロブラス総裁にたとえ罰金を払っても取引きを撤回するよう要請した。ルーラ大統領も同感だ。
 ブラジルは広大な農地とアマゾン川とパンタナルに守られた豊かな環境条件を有するが、肥料三大要素の二つを欠いた。ペトロブラスは、政府の市場支配戦略など眼中になかったようだ。
 政府の肥料自給計画をペトロブラスは無視し、カリウムの世界最大企業へ鉱山を売却した。政府とペトロブラスは、岩塩下油田でも同じような同舟異夢を演じている。カリウム鉱山をカナダ企業へ売却するのは、態々商売仇をつくるようなもの。
 北ノーバ・オリンダのカリウム鉱山は十年以上前に発見され、政府が喉から手が出るほど欲しがっていたのを、ペトロブラスは知らなかった。同鉱山の売却は過去数年、何度も浮上したが誰も何もいわなかった。
 たまたま民間企業が、同鉱山はカリウムの宝庫であると洩らしたことで注目を浴びた。カリウム鉱石は、幅百キロメートル、長さ四百キロメートルにわたる世界でも稀に見る大鉱山。カナダへ売却した一〇%だけでも、一国の経済を大きく左右する。