ニッケイ新聞 2008年8月15日付け
親心、空気、仏様の慈悲―。自然にあると思い、その存在にも気が付かない。煩悩世界に生きる人間の性だろう。
凡夫記者にとって、リベルダーデのスナック酒場「つがる」がそれに近い。華やかかりし頃のコロニアを伝える数少ない一世の砦だ。
ここ最近、店の灯りが消えている。遂にまた一つ…。というわけではなく、単純にママが故郷に帰っているだけなのだが、何となく淋しい。
仕事帰りの夜の交差点。「今日も開けているな」と一人頷き、安心したような心持ちで帰路につくのが習慣になっているからだろうか。常連でもないのに不思議だ。
時折寄ったときに聞くコロニア今昔物語には身を乗り出すし、店の何ともいえない雰囲気も捨て難い魅力があるのだが。
一世の砦のともしびを、まだまだ守り続けてほしい。 (剛)