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コラム オーリャ!

ニッケイ新聞 2008年8月8日付け

 街に鳴り響くサイレンの音とセミの声を聞きながら、額の汗を拭う手を止め、黙祷する。
 広島出身の記者にとって、時刻とかつての自分の姿が重なるのは唯一、毎年の八月六日午前八時十五分だ。
 六十三年目の原爆忌を迎えた今、サンパウロ市モオカ区の移民博物館で「ヒロシマ・ナガサキ展」が開催されている。
 被爆資料を持ち込んだ展示としてはブラジル初。公立学校の授業にも組み込まれ、約三万人の入場を見込んでいる。
 中南米に核保有国はないが、その廃絶は地球上にある全ての国の課題だ。多くの市民に訪れてもらい、平和を考える機会にと願う。
 五日夜―。何の気なしに広島の知人に電話をかけ、話しているちょうどその時、受話器の向こうでサイレンが。
 平和への気持ち新たに、遠く暑い故郷を思い一人目を閉じた。(剛)