ニッケイ新聞 2008年8月6日付け
ペルーの奇跡的経済成長がもたらした問題は、乗用車の神風運転ばかりではない。最も深刻なのは、甚だしい所得格差の拡大である。好況に酔う人の陰には、疎外された群集がいる。
国は財政豊かだが、底辺の人たちは毎日の食事に事欠く。ペルー国民の五〇%は貧しく、二〇%は極貧。貧しい人々の抗議運動やスト、サボのニュースが無い日はない。ペルーの所得再分配方式が拙劣なのだ。
ペルーには、銅鉱山が多い。売上金は、再投資と法律で決められている。管理は地方自治体に委ねられ、労働者に最低賃金を払うだけ。技術者や経営管理職の採用は、許されない。
モケグア市では市民が暴動を起こし、鎮静に向かった警察官六十人を兵舎へ人質に閉じ込めた。銅の売上金を一部、市民へ分配せよという要求だ。
政府は所得の分配法を検討するが、市民の合意が得られない。