ニッケイ新聞 2008年8月1日付け
【既報】国境を越えた様々な楽器とのアンサンブル活動を、NYを拠点に二十五年間続けてきたピアニスト井上かずこさんの「井上室内合奏団ICEニューヨーク」が、二十八日に初来伯した。三日午前十一時から文協大講堂で行なわれる第三十九回文協ドミンゴ・コンサートに出演、「音と映像による幻想曲『カグヤ姫』」を披露する。
井上さんは、一九六八年に単身でNYへ渡り、マンハッタン音楽院やジュリア―ド音楽院でピアノを学んだ。長崎被爆者でバイオリニストの井上将興氏と出会ったのがきっかけで、自分にとっての平和とは何か、日本人であるとは、女性であるとは何か、を自問自答し始め、国境や音楽ジャンルを超えたアンサンブル活動を通して、それらを表現するスタイルを確立したそうだ。
今回、初来伯コンサートを開くことになったのは、日本で二十年前に出会ったブラジル人の悲運な女の子のことが頭から離れず、NYの日系人会で出会った女性に背中を押してもらったと言う。「移民百周年を迎えたブラジルは、新しい希望の感じられる国。そこで平和へのアプローチをしてみたかった」。
一九九八年から日米公演を続けてきた、ランダル・シュナイダー作曲「音と映像による幻想曲『カグヤ姫』」を柱に演奏する。これは音と映像、ナレーションが交じった作品で、自身が発案した。「あまり知られていないカグヤ姫の側面を、表現しています。天上と地上で過ごしたカグヤ姫は、移民の気持ちに似たものを持っているのでは」と、井上さんは話す。
コンサートは、フィンランド人のフルート奏者ウラ・スオッコさん、日系三世のオーボエ奏者佐藤アーサーさんを迎え、二時間弱。入場無料だが、一キロの保存食の持参を呼びかけている。