ニッケイ新聞 2008年7月30日付け
戦前戦後を通じ、多くの移民が日本最後の夜を過ごした旧神戸移住センター(旧移民収容所)。第一回ブラジル移民船「笠戸丸」が出港した四月二十八日、そのセンターを保存・再整備する工事の着工宣言が同敷地で行なわれた。
老朽化したセンターの保存は、文協、援協、県連や兵庫県人会などブラジルの日系団体も数度にわたり要望してきたもの。地域在住ブラジル人の支援活動を続ける「関西ブラジル人コミュニティ(CBK)」でも、保存運動の一環として署名活動を行なった。
このほどブラジルを訪れた松原マリナ代表(54、二世)によれば、日本とブラジルで集まった署名は約五千。昨年一月に神戸市長に手渡された。松原さんは、「そのうち半分以上がブラジルからのものでした」と話し、あらためてブラジル日系社会の協力に感謝の気持ちを表した。
同センターを保存・再整備するこの事業は、神戸市が兵庫県、国土交通省とともに行なうもの。日伯協会や県・市、CBKなどからなる再整備基本計画検討委員会(委員長=中牧弘允・国立民族学博物館民族文化研究所教授)の報告を受けて市が基本計画を策定した。再開予定は来年の六月。
計画では、一、二階部分を「移民ミュージアム」とし、二、三階に在住外国人支援団体の事務所、三、四階に「国際芸術交流」などの機能を備えた場所として整備、その他に展示会やシンポジウムを行なう共有スペースを設置する。
中でも移民ミュージアムでは、資料展示のほか、移民が渡伯前に過ごした収容所の居室を再現することも考えられているという。
百周年の今年は、移住者でセンターを訪れる人も多かったそうだ。「今年は事務所が一階にあったので、見学に来た人と話ができて良かった。そういうつながりが大事だと思う」と松原さん。
CBKは現在、改修工事にともない五月から東灘区に移転しているが、来年の五月ごろにはセンターへ戻る予定という。松原さんは「日本に来たらぜひ訪れてほしい」と期待を表した。