ニッケイ新聞 2008年7月25日付け
飲酒運転撲滅を目指すより厳格な新法が施行されたのは六月二十日。取締りが強化され、事故や暴力減少とされる一方、目も覆いたくなるような事故も絶えていない。
一例は、二十二日夜、バンデイランテス道~アニャングエラ道間のバイパスで、内陸方面に向う車線を走っていたトラックがUターンし逆行、後続車二台と衝突したというもの。一台目の運転手は即死。二台目の運転手も右大腿骨を骨折し、二十三日に手術を受けた。
二十四日伯字紙によれば、自分が逆行していたのに相手が逆行と弁明したトラック運転手は、一見してわかるほど酔っており、呼気中のアルコール濃度は一・三ミリグラム。新法では〇・一ミリグラムから罰則が適用され、〇・三ミリグラム以上は身柄も拘束される。
また、二月以降続発している逆行事故は、報道されたものだけで一三件目。先月二十八日にブラジリア近郊で起きた四人死亡の事故も飲酒運転で逆行したものだった。
一方、取締り強化で事故が減少しているのも確かで、十四日フォーリャ紙がサンパウロ州の取締り日の交通事故死は五七%減少と報じているほか、十五日付けフォーリャ紙が、全国にある一四四のSAMU(救急車両)基地中一四の基地での救急出動は二四%減と報道。同紙は、サンパウロ州立病院での家庭内の暴力事件被害者対応数も減少と報じ、新法の効果と評価している。
ただ、気掛りなのは、二十三日フォーリャ紙の五州都の事故死亡率。免許所有者十万人当たりの事故死亡率は、ポルト・ヴェーリョ二九・六、マカパー二八・二、パウマス二七・一、クイアバ二六・七、カンポ・グランデ二六・一。前記のSAMUの出動数減少データにはこれら五州都は含まれず、アルコール濃度測定器さえない所もある。取締りの有無、その件数や場所の適否が新法施行後の結果を分けている。
一方、新法施行後の十万人当たり事故死亡率は一三・九のサンパウロ市では、先週から検問地点を増設。今週末からの取締り開始も午後二時からとするほか、ショッピングやバール近辺での毎日の取締り実施も計画されている。
新法施行後の飲酒運転減少の報に気をよくし、「厳罰化で環境法違反も減るだろう」と発言した大統領に、法を改正しても取締りがなければ問題解決はないとコメントした識者がいたが、罰せられなければ知っていても違反する姿は、人間の弱さそのものでもある。