ニッケイ新聞 2008年7月24日付け
二〇〇七年の在外ブラジル人による本国送金はは二十八億ドルと中央銀行から発表があった。最も多いのは米国からの十三億ドルで、四二%を占める。在外ブラジル人人口は二百五十万~三百万人ともいわれ、米国の約百~百五十万人が最大だ▼ブラジル国営通信によれば、送金額で二位は日本のデカセギからの三四%、三位はEU圏の一六%▼送り先はブラジル南東部(五八%)と南部(三九%)であり、奇しくも、欧州系移民や日本移民などが多く入った地域だ。受取人の六五%は女性で、大学卒は二一%しかおらず、一般的に低学歴で中産階級の下層に属している▼興味深いことに、ブラジルはコインの裏表のような側面を持つ。ブラジル国内には約百五十万人から二百万人の不法滞在外国人がおり、一年間の母国への送金総額は十億ドルにもなるのという▼しかもここ数年の好況を反映して、前年同期比で七八%も彼らの祖国への国外送金額が伸びている。大半はボリビア、コロンビアなどだ▼国内の仕事に満足できないブラジル人自身は、欧米へ移民労働者として渡る。その結果、欧米諸国が入管を厳しくしはじめ、ルーラ大統領はその政策を厳しく批判している▼在外ブラジル人の本国送金は国内経済のある部分を支えているから、大統領の発言は、ある種の国内産業保護ともいえる。だが、ブラジルが好況になっても、ブラジル人自身の職が増えない構造になっている点では、あまり歓迎されない構図ともいえる▼まるで「回転扉」のようなこの労働力移動のグローバル化は、一体どこまで進んでいくのだろう。(深)