ニッケイ新聞 2008年7月19日付け
人種や文化、自然に富み、生態系変化の豊かなブラジルは祝された国だが、それだけにその管理運営には大きな責任も伴う。そのいう意味で、十六、十八両日の伯字紙が報じた法定アマゾンの森林伐採についての報告は、ブラジルがその責任を果たせていない証拠といえる。
十六日の報道は五月の森林伐採報告で、法定アマゾン全域の伐採面積は一〇九六平方キロ。数字そのものは、四月の一一二三平方キロに比べると二・四%減少している。
しかし、乾季で伐採が増える六~八月を前にしてこの数字は決して喜べるものではなく、六月二十四日フォーリャ紙で環境相が年間伐採量一万四千~五千平方キロと予想した通り、〇六/〇七年の伐採量を上回ることは必至と考えられている。
伐採最多は例のごとくマット・グロッソ(MT)で五九%。一~五月の伐採面積三七三〇平方キロでみても、MTは二五七一平方キロ伐採で六九%。以下、四六四平方キロのロライマが一二%、三八三平方キロのパラーが一〇%と続く。
今回は、伐採面積の八八%についての森林破壊度も報告されており、裸状態になった地域五九・五%、多少の木は残っているが破壊度は重度二三%、破壊度は中度か軽度五・五%だという。
一方、「火の弓作戦」による監査なども続いており、十八日伯字紙はロンドニアとアクレで森林保護区と先住民保護区の中での伐採がかなり進行と報告。河川や幹線道路に近いところの伐採が特に多いという。
十七日エスタード紙には、農相の「国土の七割は農地転用できず、農業消滅の方が森林消滅より容易だ」との発言と、前環境相の「アマゾン伐採削減対策の弱点は持続性のある経済対策が遅れていることで、一部閣僚や地域の長たちが非協力的であることがアマゾン政策を困難にしている」との批判も掲載。森林伐採の多い三六の自治体の長は製材業者や農園主、牧場主が大半という中、森林保護政策は受け容れ難いということだろうが、目先の利益優先で将来を危うくする愚は犯さないよう願いたい。
十八日共同通信は、国連食糧農業機関の「一九八九年~二〇〇三年の間に、世界の森や畑、乱開発で地表の二四%が荒れ地になり、一五億人以上が影響を受けている」との報告を報じたが、アマゾンやセラード、カアチンガなど国内全域で自然破壊が進んでいる上、伐採地での放牧や、さとうきび、穀物生産量が多いブラジルには耳が痛い。