ニッケイ新聞 2008年7月19日付け
キルチネル亜大統領は十七日、農産物輸出税の増税承認を問う上院表決で前代未聞の敗退を期したと十八日付けエスタード紙が報じた。表決は拮抗し、決定票となったのは副大統領を兼務するフリオ・コボ上院議長の反政府票であった。
上院の敗退は政治的インパクトばかりでなく、キルチネル政権にとって財政逼迫の原因になると憂慮される。農産物輸出税の否決で、二十億ドルの税収減となりブラジルモデルである財政黒字の経済政策は座礁する。
反政府票を投じたコボ副大統領は「裏切り行為ではない。歴史が私の正しさを証明する」と述べた。亜国は三月から農業生産者と合流した野党と政府が経済政策を巡って対立していた。
副大統領が、良識ある者は「亜国の発展は農業にある」ことを理解すると述べた。一方、大統領はチャコ空港竣工式で「亜国発展のために与野党に関わらず、失望させる人たちがいる」と副大統領を非難した。
農産物への増税は、同国の経済活動をマヒさせ、生活必需品のインフレを引き起こし賛否両論で国民を二分した。農業を軽視する国は、経済の基礎が軟弱である。
十七日の上院表決は、亜国政治の分水嶺であった。政府の敗退で亜金融市場は、活気を呼び戻した。市民は副大統領を「裏切り者」と罵る一方、経済界は「コボ現象」と名づけて賞賛した。
政府与党は対決の政治姿勢を改め、話し合い路線を採ることにした。農業生産者との対決は、夫の前大統領時代を入れると長い闘争だ。しかし、鮮明に対決姿勢を打ち出したのは現政権である。