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大統領一行=ヴェトナムを公式訪問=対米長期戦に学ぶ=国家主権を守る生の教訓=新しく開けるアジア商圏

ニッケイ新聞 2008年7月12日付け

 ルーラ大統領は十日、ヴェトナムを歴訪し、ヴェトナム戦の英雄ヴォー・グエン・ザップ将軍を訪ねた。同将軍はヴェトナム独立のため、三十三年にわたる対仏戦と対米戦を勝利に導いた功労者だ。しかし、何故いま「ヴォー・グエン・ザップ」なのか。ブラジル対米外交への布石らしい。
 ルーラ大統領は「ヴェトナムが米国を倒すのは、少年ダビデがアマレクの巨人ゴリアテを倒すようなもの」と絶賛した。民主主義に命を掛けるなら、その好例がザップ将軍だと大統領は喝破した。大統領は、将軍の戦略思考法をつぶさに学んだという。
 将軍は一行の中の紅一点ロウセフ官房長官に目を止めた。大統領は官房長官を将軍に紹介し「こちらのお嬢さんは私の閣僚で、若き日左翼運動に命を張った闘士であります。将軍を左翼運動の鏡と慕っておりますので、並んで写真を撮らせて下さい」と頼んだ。
 自己紹介では「六〇年代は政治家ではなく、コリンチアンスのファンでした。弱いチームを応援するのが癖で、それから弱者や虐げられている人を助けることにしました。ヴェトナム人は、背が低く痩せて見るからに貧相だが、米国人はハンバーグで丸々太って強そうです」と。
 大統領と官房長官、外相、産業開発相の一行は、さらにヴェトナム政庁を訪れた。「ヴェトナムが国家主権を守るため長期間戦った体験は、ブラジル国民が幾世代にもわたり教訓とし、世界の左翼運動を励ます」とヴェトナム共産党書記長へ挨拶をした。
 ディエン・ビエン・フーでは仏植民地時代に終止符を打ち、七〇年にはヴェトナム統一を図った功績を称えた。二十世紀の悪夢というヴェトナム戦が行われた六〇年代、大統領は苦戦にあえぐコリンチアンスを応援していたと述べ政府要人の爆笑をかった。
 大統領はブラジルのゼネコンが経験豊かなことで、アジア地域の建設工事にヴェトナム人の起用を提案した。オデブレヒトやグッチエレスなどのゼネコンは、同国の環状道路に進出。さらにリビアの工事にも、五百四十人のヴェトナム人を雇用する。ほかにブラジルの建設会社二十五社が、ヴェトナム人土工の採用を計画中である。
 ブラジルは最近、ヴェトナムとの外交関係に力を入れ、軍事顧問団の招聘を行っている。米国がコロンビアと軍事同盟を結び、南米へ食指を伸ばしていることでブラジルの布石といえそうだ。