ニッケイ新聞 2008年7月12日付け
愛媛県出身の戦後移民、大野忠完(ただひろ)さん(70=コチア在住=)が、ブラジルで初めて、クヌギのおがくずブロックで栽培した椎茸を、七年越しの試行錯誤の結果、去年から流通させ始めた。
クヌギは椎茸栽培の最適木であり、日本では主流だ。しかし、ブラジルではまだ原木が少なく、ユーカリの木で作ったものがお馴染み。だが「きのこ本来の味がしない。クヌギで作ったものは違う。是非、食べて違いを確かめて見て欲しい」と、大野さんは自信のほどをうかがわせた。大野さんを技術指導したのは、〝きのこ博士〟として知られる舘澤功之さん。
大野さんは定年退職後、二〇〇一年に三カ月間日本へ技術を学びに行き、それから七年をかけ、去年十月にようやく流通させるに至った。
椎茸を作った理由について「元々百姓の出だから、何かやりたいと思っていた」。元々パラグアイに農業移民として入ったが、長らくエンジニアとして働いた。いわば原点回帰と言えそうだ。
クヌギの原木を使った椎茸栽培は、すでに行われているが、おがくずブロックを使ったのは初めてだ。これを使うと、室内で一年を通して工場のように生産できる利点がある。
現在は、主にレストランへ卸しているそうだが、リベルダーデでも文協ビル横にあるコサカ商店で購入可能。
大野さんは椎茸栽培と同時に、クヌギの苗木も販売している。日本人移民の先駆者たちは、原生林を伐採し農地とし、ブラジルの発展に貢献したが、百年が経過した今、今度は「クヌギの木を育てて恩返しをしよう」と企画した。クヌギは日本よりも成長のスピードが二倍以上早く、そして何より実用的で用途が広いという。苗木は七~八年、二回目からは四年毎に伐採可能となるそうだ。数百万本の苗木が育っている。
値段などに関する問い合わせは、小川(電話=11・9631・9521)、または舘澤(電話=11・4655・0680)、もしくは、サイト(www.kunugui.com.br)まで。