ニッケイ新聞 2008年7月8日付け
日本でも、血圧の高い人は、冬の朝の脳卒中に注意と言うが、六日付けフォーリャ紙に、ブラジルでは脳血管障害(AVC、日本では英語からとったCVDを使用)に関する知識のない人が多いとの記事が出た。
脳血管障害は、脳梗塞や脳出血に代表される脳の病気の総称。ブラジルでは昨年、十六万八千人が入院し、約三万人が命を落としたというが、サンパウロ市などで調べたところ、AVCの意味を知っている人は一五・六%、AVCの治療は脳神経科や脳神経外科と答えた人は二六・五%だった。
脳梗塞は、脳の血管の一部がつまり、その先の細胞に酸素や栄養が届かなくなるもので、血管が細くなって血流障害が起きる場合や、血栓などで血管が詰まる場合などがある。最も大きな危険因子は動脈硬化で、高血圧や高脂血症、糖尿病、喫煙などが動脈硬化を引起こす原因と考えられている。心臓などで出来た血栓が血管を詰まらせた場合は、突然症状が現れ、広範囲の障害を引起こすことが多くなる。
一方、脳の血管が破裂して、脳内に血が流れ込む脳内出血は、高血圧が原因となることが多く、くも膜下出血は、脳動脈瘤や能動静脈奇形によることが多い。
いずれの場合も早急な処置が必要で、手足の痺れや手足の脱力、半身が利かなくなる、ろれつが回らなくなる、つじつまの合わないことを言い始める、物が二重に見える、めまいがしてふらつく、激しい頭痛などの症状が出た場合、脳血管障害を疑ってみる必要がある。
肥満や運動不足、家族にAVCを患った人がいる場合もリスクが高くなるが、血栓を溶かす薬は発症後三時間以内に処方する必要があるなど、時間が予後を決める。処置が早く、リハビリが適切に行われれば、障害も軽く済むことが多い。早めの処置を受けるために便利なのはSAMUや消防署の救急車だが、SAMUは192、消防署は193で連絡が取れる。
また、五日のエスタード紙には、Enterococcus faeciumと呼ばれる、大豆のヨーグルトに含まれ善玉コレステロール(HDL)を増やす菌の研究が進められているとの報。HDLが一~二%増えると心臓病の危険度が下がるというが、実験ではHDLが一〇%も増えたという。ブラジルの心臓病疾患による死者は三〇万人。七〇%のコレステロールは肝臓で作られるが、残り三〇%は食物から摂取されるという。
脳血管障害も心臓疾患も、食生活が果たす役割が大きいといえそうだ。