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有望だ!マンジオッカでんぷん=〃食糧不足時代〃の切り札になるか=パラナ州北西部アマポラン=日系工場、増産態勢へ=日本への輸出も検討

ニッケイ新聞 2008年7月4日付け

 人口五千人のパラナ州北西部の町、アマポラン市郊外。ここに同地で生産が盛んなマンジオッカをつかって、でんぷんを生産する日系人経営の工場がある。アミード・ヤマカワ。パラナバイ市長の山川マウリシオ氏とその兄弟が一九八九年に設立した会社だ。同社の生産状況や同業界の将来などを尋ねた。
 大型トラックに隙間なくぎっしりと詰められたマンジオッカ。トラックごと斜めに傾けられた荷台から、全自動の切断機に次々と放り込まれた。小さくなったマンジオッカは皮や汚れを落とされ、でんぷんを抽出する大型分離機へかけられた。ユーカリの木を燃やした熱風を利用して、一四%まで水分を乾燥させる。ほとんどの工程が大型機械ですすみ、二十四時間休むことはない。八十人の従業員が三交代で勤務する。
 最高経営責任者の山川オルガさん(51・二世)とその夫ノブヨシさんは、自社自慢の工場を前に誇った。「でんぷんの用途は千以上にものぼる。世界的にも需要が高まっているし、将来は明るい」。
 パンやケーキ、ハム、麺類といった加工食品はじめ、製紙や衣類、香水などの生活用品と幅広い。身近なところでは、ポン・デ・ケージョや、明星のカップラーメンにも用いる。
 オルガさんによれば、マンジオッカのでんぷん精製会社は州内で三十ほどある。その多くが北パラナ一帯に集中。他地域ではバイーア州などブラジル北東部に固まり、全伯で約五十の会社があるという。日系の会社は、同社と加工食品大手のYOKIのみだ。
 マンジオッカの種類だけでも三十種類以上ある。中でもでんぷんの抽出に向いているのはフェクーラ・ブランカ、オーリョ・ジュントと呼ばれる種。食用向きではないが、よくでんぷんが採れるため、他の会社もこの種をつかうという。
 同工場が稼動した九八年ごろ、一日のでんぷん生産量は約八十トンだった。現在は一日五百トンのマンジオッカから百二十五トンを生産する。マンジオッカ一トンあたりの仕入れ値は百六十レアル。一トンのでんぷんは、工場の卸値で約九百五十レアルになる。店頭市場価格では、ざっと千五百レアルほどだ。
 同社は〇四年、南マットグロッソ州ノーヴァ・アンドラジーナ市にも新工場を設立。今年八月には、アマポラン工場のマンジオッカの加工量をさらに二百トン増やす計画だ。輸出先のアメリカやヨーロッパ各国からの需要が増えているためだ。「アメリカがトウモロコシでエタノールをつくるようになった。世界的に食料品が値上げしている」。こうした背景を踏まえての決定だ。
 上向きの成長を続けているが苦しい経営を迫られたこともある。〇二年にマンジオッカが生産過多になり、その反動で〇三年と〇四年にかけて、同地域の生産量が大幅に減少したときだ。肝心の原材料の確保が困難になった。現在は六十の農家と直接契約、マンジオッカを満載したトラックがひっきりなしに工場にやってくる。年間を通して材料を安定供給できる体制に整えた。
 会社を立ち上げた山川マウリシオさん(パラナバイ市市長)は「日本への輸出販売も検討している」と力を込める。来年は設立二十周年。「お祝いのパーティーをぜひ開きたい」。オルガさんはそう目を輝かせる。