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「代替エネルギー開発目指す」=【解説】甘利経産大臣が真情吐露=世界経済安定に日伯が協力

ニッケイ新聞 2008年7月2日付け

 【既報関連】ブラジル訪問中の甘利明経産大臣ら訪伯団約四十人は六月三十日、サンパウロ州ピラシカーバ市でのエタノール関連施設を視察した。経産大臣としては、ただでさえ二十四年ぶりの訪伯ではあるが、翌週に洞爺湖サミットを控えたこの時期に訪伯したことは、今後の両国関係への期待を強くにじませるものだ。しかも、直前にはサウジアラビア、クエートなどの産油国に立ち寄り増産の約束を取り付け、その足で、石油に代わる代替エネルギーといわれるエタノール大国ブラジルに立ち寄った。日本の根幹に関わる部分で、新たな日伯関係の再構築が始まったことを感じさせる今回の来伯のようだ。(深沢正雪記者)
 ピラシカーバ市に本社があるエタノール輸出世界一のコザン社を視察している最中に、甘利経産大臣は現地メディアの質問に応え、「エタノール工場を自分の目で見る必要があると思ってきた。日伯にはすでにエタノール委員会がある。これを活発に動かして、ブラジルからエタノールを導入する計画を具体化したいと思います」とのべ、日伯の経済関係再構築にむけた意気込みを語った。
 二つ目の視察先、エタノールプラント建設では最大手のデジーニ社でジョゼ・ルイス・オリベリオ副社長から、京都議定書に関する日伯協力への提言が説明され、それに触発されたかのように甘利経産大臣は異例ともいえる思い切った演説を始めた。
 まず、日本は世界のGDPの一〇%を占めるが、環境関連テクノロジーの発達により排出する二酸化炭素は四・四%に過ぎず、EUよりも経済効率がいいとした上で、京都議定書の目標数値は日本にとっては困難のない数字であり、「世界中が日本と同じ経済効率なら、世界の環境問題は瞬時に解決する」と強調した。
 さらに「石油に代わる代替エネルギーを開発し、石油市場で儲けている金融事業者に大損をさせたい」との気持ちを吐露した。その背景には、訪伯直前に産油国によって増産の約束を取り付けたにも関わらず、原油価格が高騰を続けている現状があるようだ。
 「世界の金融先物取引で儲けようとする輩が、不当に市場を錯乱させようとしている部分を否定できない」との認識を示した上で、「世界経済の安定のためには冷静な態度で、石油以外の代替エネルギーを開発したいと思っています」との姿勢を明らかにした。
 その上で、ブラジルとパートナーシップを組むに当たっては「安定供給」と「石油との価格競争力」の二点をしっかりと考えて欲しいと注文し、最後に「刺激的な話でニュースになるかもしれませんが、本当の気持ちです」と結んだ。
 同行している同省関係者らも、このような思い切った大臣の発言は珍しいと口を揃えた。
 翌一日、二日は首都で、主要閣僚とルーラ大統領との懇談が続けざまに行われ、覚え書きが取り交わされる予定だ。資源小国日本にとってエネルギー確保は死活問題。この重要なテーマに沿って、日伯関係の再構築が音をたてて動き始めた様子が、今回の大臣来伯からは感じられた。