ニッケイ新聞 2008年7月2日付け
「ブラジル日系画家百年の歩み展」が三日から、神戸を皮切りに日本国内四都市で開催される。戦前の草創期から戦後、そして現在活動する四十三人の作品を通じて、ブラジルにおける日系美術の足跡をたどる百周年記念事業だ。主催する文協美術委員会の豊田豊委員長、画家の若林和男さんが本紙を訪れ、「日系美術の歴史を作った先輩を顕彰し、次の百年を作る若手作家との橋渡しをしたい」と抱負を語った。
日系美術の歴史はパリの藤田嗣治のリオ滞在(一九三一年)から上長井正、田中フラビオ四郎らへと広がったリオでの活動と、半田知雄らによって始まったサンパウロ美術研究会(聖美会、三五年)を中心としたサンパウロでの活動に始まる。
この草創期を経て戦後、五〇年代に間部学、大竹富江、福島近らがビエンナーレを舞台に活躍。これに豊田さん、若林さんら戦後移住した画家が加わり、日系作家の名をブラジル美術界に印象付けることになる。
今回の展示会では、ブラジル美術界に足跡を残したこれらの作家、現在も活動する日系美術家らの作品七十四点を、四つの世代に分けて展示する。
「できればもっと多くの作品を見てほしかったが、(費用面などの問題もあり)持っていけなかったいい作家の作品もあります」と若林さん。立体の作品も、同様の理由から選考に入れることはできなかったという。
神戸の後は松山(七月)、横浜(九月)、熊本(十月)で実施。神戸の「さんちかホール」で行なわれる開会式には、ブラジル大使館の代表者も出席する見込みだ。
ブラジル美術界における日系人の歩みをたどる同展。若林さんは「日系作家の層がこれだけ厚いのはブラジルだけ。そうした現状、特殊性が日本の人たちに伝われば幸せ」と期待を表す。
豊田さんも「歴史を作った大先輩の仕事を伝えることで、二世、三、四世の作家に頑張ってもらえることが我々の望みです」と語った。
出品作家は次の通り(敬称略)。【第一世代】=藤田嗣治、上長井正、半田知雄、高岡由也、玉木勇治、沖中正男、【第二世代】=田中フラビオ四郎、間部学、大竹富江、【第三世代】=久保田アルツール、近藤敏、田菊ふみ、榊原久雄、柴田イネス、若林和男、廣田健一、金子謙一、木暮光孝、原田美弥子、越石幸子、楠野友繁、三浦義幸、鈴木幸男、豊田豊、【第四世代】=島袋アデマール、岡本アヤオ、小田エルザ、吉沢太、高瀬ヘルマン、工藤ジェームス、中久保マスオ、畑中ミドリ、高田ミルトン、大岩オスカール、沖中ロベルト、出垣ロジェリオ、広本サンドラ、福島タカシ、金子太郎、ターニア・マシャード、今里としえ、谷口康史、間部ユーゴ。