ニッケイ新聞 2008年6月25日付け
百周年を祝うために来伯された皇太子さまは二十日午後、サンパウロ市イタケーラ区の州立ヒロシマ学校で昨年から行われているプロジェット・ビバ・ジャポンを視察された。正門には地元コムニダーデの非日系人百人あまりが集まり、皇太子さまのご用車が到着すると、悲鳴のような大声援が上がった。さながらポップスターの登場シーンのような場面が展開され、皇太子さまの人気の高さがうかがわれた。
創立記念日が広島に原爆が投下された八月六日であり、近隣に日系人が多く住むことからヒロシマと命名されたこの州立校では、昨年来研鑽してきた日本人移民史や日本文化学習の成果を、皇太子さまに披露した。
同校の教育コーディネータ、ミリアン・アルメイダ・ネヴェリ教師は「このプロジェクトに参加している学校は多いけど、殿下のご視察はここが唯一。こんな光栄に浴せて幸せです」と緊張した面持ちで喜んだ。
皇太子さまは、小学部の生徒たちが折り紙、切り紙、粘土細工をしている教室を参観され、「難しいですか」「日本語に興味はありますか」などと問いかけられ、子供たちは神妙な様子で「はい」などと返事をしていた。
続いて、皇太子さまは体育館に向かわれ、広島の被爆と再生を描いたミュージカル劇「戦争と平和」を数分、鑑賞された。この劇は約百人の生徒が踊りで参加した。自ら主演する劇担当のルシアナ・マンドゥ・デ・リマ教師(22)は披露する直前、「昨年作った劇だが、殿下にお見せするためにこの一カ月間、毎日練習して演技を磨いてきた」と興奮気味に語った。
出演した生徒のヴィニシオス・ドス・サントス・マッシャードくん(14)も「殿下がこられると聞いて、みんな凄く期待が高まり、一生懸命練習してきた」と頬を紅潮させながら話した。
このプロジェットの発案者、サンパウロ州教育局の日野寛幸コーディネーター(57)は「殿下に見て頂けるとは想像もしていなかった。こんな評価を受けるとは夢のようです」と感慨深げにのべた。同プロジェットは昨年四百校が参加、生徒数にして二十五万人が学んだ。今年も継続されており、年末までに合計五十万人になると予測される。「学習発表会を参観する人の数を考えれば、その倍ぐらいの生徒・父兄が日本文化に触れあうことになる」。
皇太子さまは帰りぎわ、校舎から歓声を挙げて手を振る生徒たちに気軽に手を振って答えられ、さらに歓声が高まった。
お迎えしたロゼリー・リッタ・フェルナンデス校長は「殿下はとてもシンパチコ(社交的)で、アルモニア(調和)を感じた。ご訪問を受けられたのは、いつも協力してもらっている近隣日系社会のおかげ」と感謝した。
近くに住む野場笹江さん(85、広島出身)は「皇太子さまが私の目の前を通られ、お辞儀をされた。もったいないこと。もう、これで死んでもかまいませんよ」と声を震わせた。やはり近所に家のある帖佐としよさん(90、北海道出身)も「なんとも言葉になりません。想像以上でした」と喜んだ。