ニッケイ新聞 2008年6月25日付け
フォーリャ・デ・サンパウロ紙が去る十八日の「移民の日」に特集号を発行し、日系社会がブラジルに根付いたという基調のページづくりをした。そのなかで日系人が本来の民族性を維持できている理由は、「結婚」と「日本語」にある、としている。説得力がある結論づけといえよう▼異民族とより混じらない結婚、家庭と日本語学校でよく教育された日本語、それが大和魂を覚え、日本文化を百年にわたり伝えてきたカギだというのである▼筆者は、この記事を書いた記者が「Yamatodamashii」という語彙を、エスピリト・デ・ジャポネス(日本人の精髄)という注釈を加えながら、記事の中で極く自然に使っていることに少し驚いた。パソコンで「やまとだましい」を印字しようとすると、確かに一発で漢字変換ができるが、現代の日本人の実状をいえば、大和魂とだんだん〃疎遠〃になり、言葉としても死語化しているのではないか。それがブラジルで自然に新聞記事のなかに、生きて使用されている。これぞ「百年の積み重ね」の成果か▼ブラジル人の造語力も逞しい。「Tekakeria」はよくぞ造ったと思う。「手巻き寿司屋」ほどの意味であろうか。根拠となる日本語が存在しないのに、ポ語にしたのである▼一世にとっては、「百十周年祭典」は、高齢化がなお一層すすむことによって、縁遠いものになるかもしれない。しかし、「Yamatodamashii」や「Temakeria」は、ブラジル社会で脈々と生きつづけそうな気がする。(神)