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USP・阪大国際シンポ=移民と日系人をテーマに=ドキュメンタリー映画上映=日系企業に資金協力求める

ニッケイ新聞 2008年6月20日付け

 百周年・日伯交流年を記念して、サンパウロ大学(USP)と大阪大学共催の国際シンポジウム「移動とアイデンティティ――コンフリクト(衝突)と新たな地平」が八月五~七日の三日間、USP内カマルゴ・グアルニエリ劇場(三百人収容)で開催されることが決まった。
 移民と日系人に関する社会学・文化人類学・心理学などの幅広い分野からの学際的な分析が発表され、それに基づいた議論が行われる。具体的には、以下の六部に分かれている。「様々な移民、交差するアイデンティティ」「宗教・文化・アイデンティティ」「映画とアイデンティティ」「アイデンティティプロセス」「移民と教育」。
 特に日系人に関するドキュメンタリー映画の上映では、制作者との討議も予定され、研究者のみならず一般参加者にとっても興味深い内容となる見通し。
 阪大からは小泉潤二副学長、栗本英世グローバルコーポレーションセンター長、工藤真由美教育実践センター長ら約十人が参加予定。ブラジル側は日本移民、日系人、日系文化を研究している広範なブラジル人研究者はもとより、フランス、イタリア、米国からも研究者が招聘される。国内で実施される学術イベントとしては百周年の中でも最大規模の一つ。
 シンポに通底する考え方に関して、現代世界におきている様々な紛争や対立を理解するには、多数の民族集団を文化的・社会的・宗教的に分析する必要があり、そのためには「その場に生きるひとびとに焦点を合わせた現地調査に基づいて、綿密な、あるいは〃厚い〃現実理解が必要である」(広報資料)と説明されている。その一例として日本移民、日系人を扱う。
 これを機に、両大学は学術交流の拡大と深化を目的にした学術協定を締結し、共同研究や研究者・学生の相互交流を行っていく計画になっている。今回は第一部という位置づけで、日本移民と日系人を対象にした研究発表が行われる。第二部は八月二十四~二十六日に阪大中之島センターで行われ、より広範な地域や民族(集団)を対象に議論していく。最後に日ポ両語の報告書が刊行される予定。
 なお、同シンポジウム組織委員会の森幸一事務局長(USP教授)は、サンパウロ州調査研究支援財団(FAPESP)からの支援だけでは開催費用がまかないきれないため、日系企業になどに二万レアルの資金協力を求めている。