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記者の目=「もう式典に行かない」=入場券問題で怒りの声

ニッケイ新聞 2008年6月17日付け

 「今日配るって書いてあったのにどういうこと!」。十六日午後、本紙編集部に老婦人が興奮した様子で怒鳴り込んで来た。
 今週土曜日、サンボードロモに皇太子殿下をお迎えして開催されるブラジル日本移民百周年式典の入場券入手方法に関して、本紙が掲載した記事(十四日付け七面)を読んで、百周年協会に入場券を取りに行ったというのだが…。
 「午前八時半から配布って記事にあったから、行ったらまだ閉まってる。十時まで待ったんだけど、『明日配る』と言われた。癪に障ってしょうがない」と記者相手に十分ほどまくしたてたが、怒りは収まる様子はなかった。
 この記事は、本紙記者が重田エウゾ祭典委員長に電話取材したものだが、別の購読者からは、耳を疑うような言葉を聞いた。
 「百周年協会に電話したら、『ニッケイ新聞が勝手に書いている』と言われた」――。
 本紙は、〇三年の百周年協会発足時から、コロニア最大の関心事である百周年の一連の動きを是々非々で取り上げてきた。
 上原幸啓理事長が唱える「透明性」とは名ばかりで、広報活動をしない協会の姿勢に業を煮やし、「糠に釘」の気持ちを抑えながらも、六年間コロニアに報じてきた自負がある。
 重田氏に再度この件を確認したところ、「〃私〃は言ってない」と否定しつつも、事務局の対応に批判の声があることは認めた。
 十六日に何人に配ったか確認は取れないようだが、文協、百周年の会員、八十歳以上の高齢者に配布したようだ。
 「もう三十分ぐらい待ってる。そんなに列があるわけじゃないのにぐずぐずしている」。同日午後一時頃、体育館内で椅子に座って待っていた田中忠男さん(90)は困惑した表情を浮かべ、「だいたい行き方もよく分からない。当日は一世にも分かるように案内をちゃんとしてほしい」と注文をつける。
 「他に約三百人が入場券を取りにきたが、間に合わなかった。みんな一生懸命頑張ったんですが…」と話す重田氏は、十三日にアニェンビー国際会議場であった『日本文化週間』の開会式に出席している。
 続けて、「地方の希望者に対しては、今日中にSEDEXで送るから着くはずです」(十六日午後三時の取材時)と説明する。
 今後の配布に関しては、「十七日には必ず」と確約しながらも、「直接来るのではなく、最初に電話でリストに名前があるか確認して欲しい」という。
 リストに漏れた人がいるというのがその理由だが、煩雑かつ疎漏なやり方に高齢者の理解が得られるか疑問だ。
 ある二世婦人は、「何度協会に電話しても、たらい回しにされて、分かる人がいない。非常に不愉快。もう式典なんか行かない」と怒りを露にする。
 「伯字紙に『入場無料』と書かれてしまい、当日にドッと押し寄せるかも知れない」(重田氏)。日本語のみならずポルトガル語の広報も粗雑だったことを露呈するに至っては呆れるばかりだ。
 皇太子殿下はすでに日本を発たれた。本番まで一週間を切ってこの状態。天候と同様、神に祈るしかない。(剛)