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サービス精神の塊のよう=「響ファミリー」〃恩返し〃ショー=超満員の聴観衆を魅了=男性客も満足「きれいだナ、女形」

ニッケイ新聞 2008年6月10日付け

 会場は、割れんばかりの大きな拍手。二階席後方まで続く鈴なり立ち見客。八日、サンパウロ市文協大講堂で開かれた大衆劇団「響ファミリー」(響彬斗座長)の里帰りチャリティーショー(援協、老ク連の共催、国際交流基金協力)は、コロニア芸能史上でもあまり例をみないほどの人たちが駆けつけ、感動的に幕を閉じた。推定入場者数は約千四百人。二時間半にわたる一座の迫真の演技、舞い、カラオケに、観客は息をつく間もなくひき込まれた。幼少期からコロニア芸能祭のスターだった響兄弟。日本で更なる活躍の幅を広げるコロニア育ちの〃芸人〃が最大の恩返しを果した。
 千二百席の文協大講堂。同劇団の公演が始まった午後二時ごろには超満員。パイプ椅子の臨時席に座る高齢者ほか、鈴なりの立ち見客がずらっと並んだ。
 同劇団座長の響彬斗(26・ひびきあきと)さんは北海道生まれのブラジル日系三世。弟の響一真(23・ひびきかずま)さんはブラジル生まれ。兄弟は幼少期からコロニア芸能祭に出演するなど、〃コロニア育ち〃の役者として知られ、日本では「ブラジル兄弟」として活躍している。
 「次に何が出てくるのかわからない」――。ステージは百変化のように目まぐるしく展開。演目の合い間、彬斗座長が来場者の掛け声に絶妙な合いの手を入れて笑いを誘い、軽快なトークでも観客の心をつかんだ。
 はじまりは兄弟がブラジル公演の目玉にしていた「花魁道中」。高下駄を履いて盛装した遊女役で、座長の響彬斗さんが観客席を練り歩き、いきなり観客の度肝を抜いた。弟の一真さん、座員の悠嘉さんが歌舞伎衣装で登場し、早変わりした彬斗座長とともに、「連獅子(れんじし)」を豪快に披露した。
 彬斗座長が十三歳のときに芸の道に進もうと決心させた歌「瞼の母」に続いて、一座のオリジナル曲「茜の仙太郎」「つちのこサンバ」を披露。サビにあわせて観客と踊ったあとは、流れを一転して「無言劇」。「言葉のわからない人にも楽しんでもらいたい」とつくられた一座のオリジナルは、若い男女の甘く切ない恋の行く末を迫真の演技で表現した。
 響ファミリーへの感謝状贈呈式に続く後半部では、「子連れ狼」や槍の名手・俵星玄蕃の舞いがあると思えば、ヴォッサノバの名曲「マス・ケ・ナーダ」のカラオケと続く。一座の艶やかな「女形」に、男性客はおもわず「きれいだ」とため息を漏らした。
 フィナーレはタキシード姿で決めた座員が小金沢昇司の「ありがとう 感謝」を熱唱。うっすらと涙ぐむ彬斗座長。一座の渾身の歌声に、会場の感動は最高潮に達した。
 公演中「ブラジル人・日本人として、両国の文化の掛け橋になっていきます」と誓った彬斗座長。公演後、サイン攻めにあいながらも丁寧にファンサービスに応じた。一真さんと悠嘉さんは「みなさまに笑顔になって帰っていただけた」と満足そうに話した。
 来場者の清原みどりさん(57、一世、サンパウロ市在住)は、「すばらしかった。コロニアに感謝の気持ちを伝えたい想いを一杯に感じた」と感動さめやらない様子だった。
 なお同日午前には、花柳流なでしこ会の寿美富代師匠はじめ門下生、戸塚バレエ教室の生徒らが友情出演し、ショーを盛り上げた。
 コーディネーター役兼司会の藤瀬圭子さんは、満員を喜びながらも、当日券を求めて駆けつけた人が、席不足から入場できなかったことに対して、重ねて詫びていた。
 【今後の公演スケジュール】十五日=サンパウロ(コロニア芸能祭、アニェンビー大講堂)、同十九日=ブラジリア(連邦下院議事堂)、同二十日=サンパウロ(日本週間、アニェンビー大講堂)、同二十一日=サンパウロ(移民百終演式典記念パレード、サンボドロモ)、七月六日=グァタパラ(文協会館)、同十一、十二日=マリンガ(カリン・アダッド市立劇場)、同二十七日=帰国。